456部分:第二十七話 愛を呪うその二十六
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第二十七話 愛を呪うその二十六
「絶対にだ」
「できるのでしょうか。それは」
「いや、できない」
これもわかっているのだった。
「やはり無理だ」
「そうなのですか」
「時代の流れには逆らえない」
「それにはですか」
「プロイセンにだ。全てはまとまろうとしている」
「バイエルンではなく」
「プロイセンなのだ」
そのこと自体がだ。王の憂いだった。
そしてその憂いの中でだ。王はまた話す。
「バイエルンは。ドイツの中に入るしかできないのだ」
「それを拒むことはできないのですね」
「絶対にだ」
やはりだ。できないというのだ。
「多くの者はわかっていないがな」
「確かに。我が国では」
「プロイセンへの反感が強い」
これは避けられないものだった。これも、と言うべきだろうか。
「ドイツの盟主になろうとしているプロテスタントのあの国に対するな」
「宗教的な対立もありですね」
「そうだ。それは仕方のないことだ」
反感が起こるのもだ。止むを得ない、王はそれもわかっていた。
しかしだ。それでもだった。
「だが。それはだ」
「無駄ですか」
「結局同じなのだ。ドイツは統一されるのだから」
そのだ。プロイセンによってだ。
「誰もわかっていないのだ」
「しかし議会では」
国民の声がそのまま出る。議会ではどうかというと。
「最早反プロイセン派で、です」
「占拠されているな」
「そして彼等を選ぶ国民もです」
「わかっている。議会、とりわけ上院は反プロイセン派の巣窟となっている」
王は既にこのことを把握していた。
「最早どうしようもない」
「手は打てませんか」
「王は万能に思われている」
しかしどうかと。王は目を遠くさせて述べた。
「しかしその実はだ」
「違うのですね」
「何もできないのだ」
目を悲しくさせて。そうしての言葉だった。
「何一つとしてだ」
「できないのですか」
「一人の音楽家と共にいることもできない」
ワーグナーとのことが。また話される。
「その音楽家への中傷を止めることもだ」
「それもですか」
「できないのだ」
あくまで中傷としたのは。王がそう思いたいからだ。
そういうことにしてだ。さらに話すのだった。
「だから議会もだ」
「できませんか」
「どうにもならない。人の感情はな」
その反プロイセンが感情だからだ。どうしようもないというのだ。
「反感、とりわけ嫌悪や憎悪はだ」
「人の感情はですか」
「どうにもならない」
また言うのだった。この言葉を。
「否定しようがないのだ」
「では議会は」
「あのままプロイセンへの反感を強めていく」
「弱まることは」
「ドイツが統一されても」
それからもだというのだ。
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