455部分:第二十七話 愛を呪うその二十五
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第二十七話 愛を呪うその二十五
「ドイツ人を魅了してやまないのだ。あの国は」
「イタリアという国そのものが」
「私も好きなのだろう」
少なくともだ。嫌いではかった。
「あの国の歌劇も好きだしな」
「ヴェルディ等ですね」
「そうだ。イタリアを嫌いになることはない」
やはりそうだというのだ。
「私はだ」
「ではこのイタリアのワインは」
「もう一本欲しい」
一本だけでなくだ。もう一本だというのだ。
「そして楽しみたい」
「それではすぐに」
「二人で飲もう」
微笑みだ。王は言った。
「私の美はドイツと。王朝だが」
「王朝といいますとやはり」
「フランスだ」
ルイ十四世への敬意はだ。この時代でも健在だった。
「あの国の美も入る」
「イタリアはこれといってですか」
「ワーグナーもイタリア的なものはその芸術には入れていない」
「そうですね。確かに」
「彼の芸術はドイツだ」
そこから離れることはないのだ。ワーグナーは確かにイタリアを愛している。しかしその芸術はあくまでドイツ的であるのだ。
王もまた同じだからだ。イタリアについてはこう言うのだった。
「好きだが。それでもだ」
「美には入れられない」
「そうする。ではだ」
それではと。さらに言ってだった。
ホルニヒが持って来ただ。そのもう一本のワインも飲む。
飲みながらだ。王は。
「美味だ。イタリアだな」
「そのイタリアも統一されますね」
「あの国は王国になりそうだな」
「帝国にはなりませんか」
「帝国はドイツだ」
そのだ。ドイツだというのだ。
「我が国がなのだ」
「ドイツがですか」
「そうだ。神聖ローマ帝国だ」
それになるというのだ。
「第二のドイツ帝国だからな」
「では西ローマ帝国なのですか」
まずはシャルルマーニュ、つまりカール大帝のローマ帝国が西ローマ帝国だった。そしてその後継国家である神聖ローマ帝国もまたなのだ。
それは一旦ナポレオンにより断絶させられナポレオンが皇帝になっている。そしてナポレオン三世は叔父の跡を継ぐ形でフランス皇帝となっている。
だからだ。彼等は。
「我が国は西ローマ帝国になるのだ」
「それはいいことですか」
「ドイツにとってはいいことだ」
このことはそうだというのだ。
「しかしだ」
「しかしですか」
「私はそれは」
どうかというのだ。王は。
「拒みたい」
「それはですか」
「そうだ。拒みたい」
また言うのだった。憂いを見せて。
「私は王だ。王はだ」
「誰にも仕えるものではないというのですか」
「確かに皇帝と教皇には膝を折る」
だが、なのだ。
「しかし。臣下になることはだ」
「お嫌ですか」
「バイエルンはバイエルンだ」
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