暁 〜小説投稿サイト〜
永遠の謎
451部分:第二十七話 愛を呪うその二十一
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第二十七話 愛を呪うその二十一

「だから私を観るのだろうか」
「陛下が王だから」
「王は唯一の存在だ」
 国の中においてはだ。そうだ。そして他の国から見てもだ。
「国の主であり要だな」
「だからこそ王は見られますか」
「ましてや。私はとりわけ見られるようだ」
 見られる者であることはだ。王もわかっていた。
「だからこそだ」
「陛下は見られる」
「常に誰かに集中して見られる」
 それが王だというのだ。
「舞台を観ていてもだ」
「見られるのですか」
「常にそうだった」
 今にはじまらないというのだ。それは。
「見られているのだ」
「ではその視線は」
「辛い」
 王は言葉を漏らした。
「慣れるものではない」
「私も。確かに」
 ホルニヒはここでは自分のことから考えて話した。
「誰かに強く見られると」
「辛いな」
「そして陛下の場合は」
「常に。そして多くの者に見られる」
 それが王の置かれている立場なのだ。
「せめて舞台に集中したい」
「歌劇の時代もですね」
「王にはそれも許されないのか」
 許されないものばかりのだ。その中でもだった。
「そうなのか」
「せめて舞台はですか」
「舞台以外もだ」
 王の言葉に疲れが見えてきていた。
「私は人の視線に耐えられない」
「見られることに」
「常にな」
 このことからもだった。王は人を厭いはじめていた。
 それでだ。このことについても行った。
「もうだ」
「もうとは」
「永遠に一人でいたい程だ」
 そこまで思っているというのである。
「心の底からな」
「しかしそれは」
「できないな」
「はい、人は一人ではいられません」
「わかっているのだ」
 王は苦い顔で俯いて話した。
「だが。それでもだ」
「御一人でいたいですか」
「見られたくない」
 そのことをまた言った。
「そして見たくもない」
「見たくないとは」
「人の醜い部分もだ」
 それもだ。見たくないというのだ。
「あらゆることがだ」
「だからなのですか」
「ミュンヘンは好きだった」
 言葉は過去形になっていた。
「だが。今は」
「離れたいのですか」
「ミュンヘンを離れ」
 そしてだというのだ。
「他の何処かにいたい」
「人のいない場所に」
「そして美のある場所に」
 そこにもだというのだ。
「行きたい。そしてそこにいたい」
「それはここにありますか?」
「ある。なかったとしても」
「その場合は」
「創る」
 そうするというのだ。
「なければだ」
「そうされてその場所でなのですね」
「私はいたくなっている」
「しかしミュンヘンを離れられるのですか」
「ミュンヘンにはもうワーグナーの劇場は建てられない」
 
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ