448部分:第二十七話 愛を呪うその十八
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第二十七話 愛を呪うその十八
「昼を愛する人もいれば夜を愛する人もいる」
「それが普通なのですね」
「はい、そうあっていいと思いますが」
「有り難うございます」
王はゾフィーのその言葉にまずは礼を述べた。
そうしてだ。そのうえでこう言ったのだった。
「私は。残念に思います」
「残念に」
「はい、そう思います」
こう言うのだった。
「貴女を」
「私を」
「いえ」
言おうとしたができなかった。そのことは。
そうしてだ。言葉を一旦区切ってからだ。
ゾフィーにだ。こんなことを言ってきた。
「今宵ですが」
「今宵?」
「舞台もあります」
不意にだ。このことを言ったのである。
「シラーの舞台ですが」
「その舞台に?」
「はい、行きませんか」
ゾフィーをだ。その舞台に誘う。しかしだ。
ゾフィーは戸惑いを隠せない顔でだ。王に言葉を返したのだった。
「しかし今宵は」
「宴ですね。今のそれがありますから」
それでだ。行けないというのだ。
「ですから」
「いえ、今行けばです」
しかしだった。王はまだ彼女に言うのだった。
「間に合います」
「舞台にですか」
「第三幕には間に合います」
何としてもだ。行こうというのだ。
「ですから如何ですか」
「今宴には国から多くの方が集っていますから」
それこそバイエルン中の名士達がだ。この宴に来ているのだ。
しかし王は彼等のことには目もくれずだ。こう言うのだ。
「シラーはお嫌いですか」
「シラーですか」
「はい。確かにシラーはハプスブルク家嫌いです」
ゾフィーの姉であるエリザベートが嫁いでいるだ。その家のことを考慮しての言葉だ。それは確かにだった。
それを言ってだ。王はゾフィーに尋ねたのだった。
「だからですね」
「そうではありません」
ゾフィーはそれは否定した。首を横に振って。
そのうえでだ。こう王に返す。
「今はです」
「だからですか」
「はい。宴がありますから」
「宴は何時でも開かれます」
また言う王だった。
「しかし舞台はです」
「そうではないと」
「舞台はその都度変わるものです」
「生き物の様にですか」
「そうです。その舞台はその舞台でしかないのです」
これが王の意見だった。
「ですから」
「是非にですか」
「どうされますか?」
王はあらためてゾフィーに尋ねた。
「今は」
「今は」
ゾフィーは常識の世界の中にいてだ。王に答えた。
「すいません」
「そうですか」
「はい、今はここにいなければなりませんから」
だからだとだ。こちらの世界にいて話すのだった。
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