第6章:束の間の期間
第183話「異変と再召喚について」
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ね」
不安そうに呟いた司に、鈴が難しそうな顔をしながら答える。
その視線は、マーリンが記録していた先ほどの調査結果に固定されている。
「……やっぱり、基点はここね」
〈彼らの言う“パンドラの箱”が起動した場所だね〉
鈴はずっと少ない情報で分かる限りの解析を試みていた。
その結果、原因が“パンドラの箱”だと確信できるぐらいまで判明した。
「となると、その“パンドラの箱”を探らないと話にならなさそうね」
「……でも、肝心の“パンドラの箱”はもう封印されてるよ?」
「あのロストロギアの得体の知れなさは異常だ。……藪蛇でしかない」
「…………」
事件を巻き起こした“パンドラの箱”を探るべきだと、鈴は言う。
しかし、不用意に探るのは危険だと優輝が忠告する。
「そもそも、あれはどうやら僕に解析させるように用意したみたいだからな。僕以外では碌に解析もできないと考えるべきだろう」
「貴方だけが?……おかしくないかしら?それ」
「……ああ。そうだな」
鈴の指摘に、優輝は否定する事なく頷く。
「残念ながら、僕の記憶の限りでは心当たりはない」
「聞く前に答えるのね。……なるほど、“記憶の限りは”……ね……」
「そういう事だ。尤も、根拠も何もない憶測だが」
「……?どういう事?」
言外で交わされたそのやり取りを、司は理解できずに尋ねる。
奏も同じくわかっていないようで、首を傾げていた。
「簡単に言えば、覚えていないだけで関わりがあるかもしれないのよ」
「元々、転生して記憶が残っているケースの方が珍しい。転生者という立場なせいでその感覚は薄れているだろうがな」
「それって……」
「前世の前世、そのまた前世。……まぁ、わからないが、“志導優輝”として生きているのは今と前世だ。“パンドラの箱”を仕掛けた下手人は、飽くまで今の僕の名前を知っていただけで、それより以前の人生で関わっていたのかもしれない」
優輝にとって、導王時代も前世も心当たりがない。
それなのに今の自分を知ると言う事は、自分の知らない自分と会っていると考えた。
……例え、その存在が明らかに人智を超えた存在かもしれないのだとしても。
「そ、そんなの……!それで優輝君を標的にするなんて、おかしいよ!」
「相手にとってはそうではないんだろう」
「肉体や記憶ではなく、その魂に用があるって事ね」
「理不尽……」
「相手はおそらく神の類だもの。おかしくはないわ」
司と奏の文句を、鈴は切って捨てる。
人間としては理不尽だろうが、神のような立場ならあり得なくはない。
魂に執着していても、然程おかしくはなかった。
「まぁ
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