第八章
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「最近流行りのゆるキャラになりましたよ」
「ゆるキャラの説明をしてくれるか」
十九世紀生まれで二度の世界大戦を戦っていた銅像が知る筈もないことだった、それで勝手に尋ねたのだ。
「一体どんなものか」
「マスコットキャラで」
「マスコットか」
「アメリカ軍の機体のエムブレムみたいな」
「ああしたものか」
そう言われると銅像もわかった。
「よく描いてあったな」
「あれを可愛く、アメリカ鼠みたいな感じで」
「あのアニメだな」
「はい、あのアニメみたいな感じのデザインにしてです」
「私をゆるキャラにしたのか」
「自衛隊の方で」
「それで一体どんな姿だ」
銅像は勝手に自分のその姿について尋ねた、今も二人は資材班の事務所でソファーにおいて話をしている。
「その時の私は」
「こんなのです」
勝手は自分の携帯を出してそこにある画像を銅像本人に見せた、その二頭身で可愛くデフォルメされたそれを。
その姿を見てだ、銅像は最初固まった。それから三分程してから復活して勝手に対して首を傾げさせつつ語った。
「私は好かれるタイプではなかった」
「当時の日本では大人気でしたよね」
「しかし軍では人望はなかった」
その性格故にだ、傲岸不遜な。ただし弱い者いじめなぞせず当時としては人種的偏見も希薄な逸話がある人物だった。
「その私がか」
「まあこうなってます、今は」
「わからないものだ、しかしだ」
「しかしといいますと」
「悪い気はしない」
銅像自身のコメントである。
「これはな」
「そうですか」
「私も許す」
他ならぬ彼自身がというのだ。
「それをゆるキャラとやらにすることをな」
「そうですか、それじゃあ」
「どんどんやってくれ、それでゆるキャラの私の名前は何という」
「ダグラス君です」
勝手は銅像に笑って答えた。
「そのままの名前ですね」
「そうだな、ではその名前でだ」
「海上自衛隊の厚木基地では」
「非公式ゆるキャラで何でもしてくれ」
「今度着ぐるみとか作りますんで」
「私自身が許す、何でもしてくれ」
銅像自身は快諾だった、そしてだった。
このゆるキャラは銅像自身の許しとプッシュを受けて厚木基地で大々的に愛されることになった。それで実際に着ぐるみも作られて。
自衛官達が中に入ってイベント等にも出た、銅像が動くことは厚木基地の間だけの秘密にして。
勝手はこの日海上自衛隊厚木基地のイベントに参加していた、そこで着ぐるみを着ている自衛官の手助けをしていたが。
そこに銅像が来てだ、勝手と着ぐるみを着ている自衛官に声をかけた。
「頑張ってくれ」
「あっ、いらしたんですか」
「うむ、私が出ていると聞いてな」
その着ぐるみを見ての言葉だ。
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