第一章
[2]次話
ダグラス君
勝手信一郎は広島生まれで大学を卒業して防衛庁の事務官に採用された、面長で細い顎に痩せた頬を持っている青年だ。黒髪をセンター分けにしていて背は一七〇位だ。顔と同じく身体つきも痩せている。
彼は就職し研修の後で正式に勤務することになったが。
彼は出身地である広島にある呉かそこに近い場所での勤務、陸空海のどの自衛隊でもそうなると考えていたが。
人事に言われたことにだ、彼は思わず声をあげた。
「厚木ですか」
「はい、あちらになりました」
人事のお姉さんが彼に笑顔で答えた。
「頑張って下さいね」
「厚木って関東ですね」
「神奈川県です」
「そうですよね、てっきりです」
勝手は予想が外れて驚いている顔で述べた。
「私は広島かその辺りだって思ってました」
「こうしたことはです」
人事、それはというのだ。
「よく『ひとごと』と言われますね」
「人事を日本語読みしたらですね」
「はい、そうなりますし」
それでと言うのだった。
「ですから」
「正直何処に行くかはですか」
「わからないです」
そうしたものだというのだ。
「ですから」
「私もですか」
「実際広島やその周りの勤務とはです」
「限らなかったんですね」
「北海道や青森、沖縄の可能性もありましたよ」
より遠い場所にというのだ。
「その可能性もありましたよ」
「そうでしたか」
「はい」
お姉さんは勝手に微笑のまま答えた。
「それでこの度はです」
「最初の勤務地はですか」
「厚木となりました」
「そうですか、それじゃあ」
「あちらで頑張ってきて下さい」
「厚木っていいますと」
勝手はお姉さんにあらためて厚木の話をした。
「あれですよね、アメリカ軍の基地がある」
「海軍ですね」
「そうですよね」
「むしろ海上自衛隊がアメリカ軍の基地の敷地の一部を借りています」
「そうした形になりますか」
「はい」
実はそうなるというのだ。
「私達が居候です」
「そうした場所ですね」
「楽しい場所ですよ。私もいたことがありますが」
お姉さんは微笑のまま厚木のことをさらに話した。
「基地の設備は充実していてアメリカ軍の施設でも遊べて」
「アメリカ軍そちらもよくて」
「安く飲める場所もありますし」
酒、それもというのだ。
「基地の外の相模原市もいい場所ですよ」
「そんなにいい場所ですか」
「美味しいお店、カラオケボックスも多くて」
「そうなんですか」
「行っていい場所です」
「じゃあ楽しく過ごせるんですね」
「間違いなく、ですから」
それでと言うのだった。
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