440部分:第二十七話 愛を呪うその十
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第二十七話 愛を呪うその十
「私がお迎えに参ります」
「そして天国にか」
「いえ、陛下は天国にも行かれません」
「地獄でもなくか」
「はい、どちらでもありません」
王に対して話す。
「また別の世界なのです」
「ではそこは何処なのか」
「陛下がいつも御覧になられている世界です」
ここではこう王に話した。
「その世界です」
「私がいつも見ている世界にか」
「陛下はそこに行かれます」
「卿のいる世界だな」
王はこのことはわかった。すぐにだ。
「そこだな」
「はい、そうです」
その通りだとだ。騎士も答える。
「そこに案内致します」
「そうか。私の次の世は」
「しかしそれでもですね」
「この世に築きたい」
王は心からこの言葉を出した。
「何としてもだ」
「そうです。それこそがです」
「私の役目か」
「この世での」
騎士もこう言うのだった。王に対して。
「ですからそれは是非です」
「この世にあの世界の、卿の美を再現することだな」
「しかしこうも考えておられますね」
騎士はここで王にこんなことも言った。
「陛下が築かれるその私の世界をです」
「私が死ねばな」
「はい、消そうと考えておられますね」
「わかるのだな」
ナイシンを読まれてもだ。王はだ。
そのことを認め。そして言うのだった。
「そうだ。そう考えている」
「やはりそうですか」
「卿の世界だが私の全てであるのだ」
王の顔は切実なものになっていく。そうしてだ。
王はだ。今騎士に話すのだった。そのことを。
「それを残すことはだ」
「されないのですね」
「しない。私はこの世では理解されないのだから」
「現在はですね」
騎士は王の言葉に期限を加えてきた。
「現在はそうですね」
「それはどういう意味だろうか」
「陛下は今は理解されることは殆んどありません」
その現在はだ。どうしてもだというのだ。
しかしだ。同時にだ。騎士は王にこうも話した。
「しかし未来は違います」
「未来はどうなのだ」
「陛下は永遠の謎になりますが」
謎になる、だがそれでもだというのだ。
王は理解されるのか。それは。
「陛下のことを心から考え理解する者が多く出ます」
「馬鹿な、そんな筈が」
「今のこの世は陛下を拒まれています」
「そうだ。私がワーグナーの、卿の世界を愛し女性を愛せないからだ」
「しかしそれがです」
「変わるというのか」
「陛下がこの世におられ為されるそのことは」
王を見つつだ。
騎士は言葉を続けていく。どうかとだ。
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