439部分:第二十七話 愛を呪うその九
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第二十七話 愛を呪うその九
「それでいいのかどうか」
「しかし人はそれが当然ですから」
「では私が同性しか愛せないことは」
「それは必然です」
「必然!?それは何故だ」
「陛下の御心がそうなのですから」
騎士は言わなかった。王がそのことは受け入れられないとわかっていたからだ。
王は実は女性である、その心がそうだとはだ。そのことは言わなかった。
しかしだ。ここでだった。
王はだ。また言ったのだった。
「心か。私の心が」
「だからです」
「私の心は女性を拒んでしまう」
「御身体は」
「それに従って身体もだ」
心からだ。女性を受け付けないと言ってだ。
そしてだ。騎士もこう王に話す。
「だからです。陛下は男性を愛されればいいのです」
「そうであっていいのか」
「陛下の全てが拒まれるのですから」
だからだとだ。王の側に立って話す。
「そうされるべきです」
「そうか」
「そうです。そしてですが」
「そして?」
「次の世では陛下はそうした肉体的な欲から解放され」
それからだというのだ。王は。
「御心のみの愛の中に生きられる方になります」
「次の世ではか」
「既に陛下の次の世でのお役目は決まっています」
「地獄ではないのか?」
王は目を伏せ。両手の指を組み合わせそのうえで顎をその手に置いてだ。暗い面持ちになってそのうえで騎士に対して尋ねた。
「私が行く次の世は」
「そう思われているのですか?」
「私は既に罪を犯している」
だからだ。地獄に落ちるというのだ。
「男色という許されない罪を」
「そのことですか」
「あれは地獄に落ちる大罪だ」
このことをだ。王は自分でも認識していた。
同性愛はキリスト教においては最大の罪の一つだ。遠い東の日本という国でフランシスコ=ザビエルがそのことを糾弾したこともあった。
そうしたこともあったしオスカー=ワイルドもそのことで罪に問われた。当然ながら王もそうした話は知っている。それで言うのだった。
「だからこそ」
「陛下が地獄に落ちられると」
「そうではないのか」
こう騎士に問うのである。
「私は罪人なのだから」
「人は誰でも罪を犯します」
騎士はその王にこう返した。
「誰もがです」
「では私もだ」
「罪と徳があります」
騎士はその二つを話に出した。
「そして罪が重ければ地獄に落ち」
「徳が重ければか」
「天国に行くことができます」
「私に徳はあるのだろうか」
「陛下がお気付きになられていないだけです」
騎士はわかっていたのだ。王のそうした徳がだ。
それでだ。王にまた言ったのだった。
「陛下には他の者よりも遥かにです」
「徳があるのか。私に」
「そう、あるのです」
「だからいいの
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