はじめまして、口入れ屋です。
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、上がってきな』
するとガチャリ、とドアの鍵が外れるような音がした。
「さ、ついてきて!」
ヤックは躊躇いも無くドアを開け、建物の中に入っていく。女も中に入ると、そこはだだっ広いホールのようになっていた。
「すげぇだろ?昔はここで酒場をやってたらしいんだけどさ、オイラん家が隣だから商売の邪魔にならないようにって今はやってないんだってさ」
ヤックの家である『赤い煉瓦亭』は1階は食事処を兼ねた酒場、2階を泊まりの客に客室として貸しているらしい。そのため、隣に立派な酒場が出来ると客の奪い合いになってしまうらしい。
「その……クチイレヤさんって、昔からあるの?」
「う〜ん?どうなんだろ。オイラが小さい頃にはもうあったけど、父ちゃんが言うにはある日突然この建物が生えてきたって言ってた」
「は、生えてきた?」
「うん。そう言ってたよ?」
ますます訳が解らない。
「ほら、こっち」
ヤックはそう言って女の手を取り、グイグイと引っ張っていく。そこには再びドアがあった。それも、分厚い鉄扉が。ヤックはまたしても、扉の横に付いている何かを弄っている。すると、目の前の鉄扉が独りでに開いた……が、中には何もない。
「さぁ、入って入って!」
「え?え?」
ヤックに尻を押されて狭い部屋に入る。中は窓もランプも見当たらないのに何故か明るい。中にも外にあったような丸い物が縦に並んで3つ付いていた。
「え〜と、これ!」
ヤックはその3つの内の一番上の丸を押すと、扉がまた勝手に閉まり、ガタンという僅かな揺れと共に妙な感覚が襲ってきた。
「凄いでしょ?これ部屋が上や下に動いてんだってさ。『えれべぇたぁ』って言うらしいよ?」
またもとんでもない物が出てきた。遠くの人と話せる魔道具に、部屋が上下に動く仕掛け?この建物の主である『クチイレヤ』とは、一体どんな人物なのか?最早生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていたハズの女は、『もう、どうにでもして……』
と、疲れきった声色で呟くのだった。
チーン、とベルを鳴らしたような音が鳴ると、三度扉が勝手に動く。確かに、さっきまでいたホールとは違う。少し薄暗い通路のような場所だ。ヤックは手慣れた様子でそこを奥に進んでいく。そこを進んでいくと突き当たりに、何やら文字らしき物が書かれたドアがあった。しかし、見た事の無い文字だ。村にあった教会で簡単な読み書きと計算は教わっていた女は、少しは文字が読める。だが、全く見た事の無い文字だった。異国の文字だろうか?等と考えていると、
「『クチイレヤ・マガミ』って書いてあるんだってさ」
とヤックが説明してくれた。ニッと歯を見せて笑うと前歯が大きく欠けているのが判っ
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