438部分:第二十七話 愛を呪うその八
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第二十七話 愛を呪うその八
王は自分の口からだ。こう言ったのだった。
「もうだ」
「左様ですか」
「反対はしないのか?」
「わかっていましたから」
だからだとだ。王に言うのだった。
「ですから」
「わかっていたのか。このことは」
「陛下は女性とは結ばれない方です」
そうだというのだ。王は。
「そのことは私にはもうわかっていました」
「そうなのか。既にか」
「はい、私にはです」
騎士にはだと。こう言うのだった。
「ですから」
「そうなのか。わかっていたのか」
「陛下は次の主になられる方ですから」
「次の?」
「やがておわかりになられます」
騎士は今はそのことについて詳しいことは言わなかった。
それでだ。そのことを言わずにだ。
そうしてだ。今度はこんなことを話した。
「では陛下。是非です」
「城のことだな」
「築かれて下さい。至上の美を」
王にだ。静かに告げたのだった。
「それが陛下のこの世で為されるべきことですから」
「そのことがだ」
「この世で、です」
あくまでこの世においてだというのだ。
「そしてそれを築かれてからです」
「私はどうするのか」
「陛下の次の場所に向かわれるのです」
「それもまた私の運命だな」
「そうです。ですからまずはです」
「わかった。この世界に築こう」
王はここで言った。騎士に対して。
「卿の城をだ」
「そうされるべきです。それでは」
「今は帰るのか」
「そうさせてもらいます」
恭しく仕える態度でだ。騎士は述べた。
「では今から」
「また出て来てくれるか」
王は去ろうとする騎士にこう問うた。
「私の前に」
「陛下がお望みとあらば」
「そうしてくれるのだな」
「私は勝手な男だ」
ここでは自嘲を込めて言う王だった。
「人を嫌おうとしているのに人が傍にいないとな」
「矛盾ですね」
「こうした割り切れないこともまた」
「そうだ。矛盾だ」
まさにそれだというのだ。
「人は矛盾しているものだな」
「その通りです」
騎士はそのことは確かに言った。
「よいか悪いかは別にして」
「そうだな。やはり」
「しかし陛下は」
「それでいいのだな」
また言う王だった。
「私もまた」
「お嫌ですか。矛盾は」
「何か釈然としないものはある」
そのことをだ。騎士に素直に述べた。
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