437部分:第二十七話 愛を呪うその七
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第二十七話 愛を呪うその七
「それだが」
「そのことは」
「今はその答えははっきりとはわからない」
王はここでは憂いの顔を見せた。
そのうえでだ。騎士にこうも話した。
「だがそれでもだ」
「今はですね」
「卿の城を築きたい」
そうだとだ。今その騎士に話す。
「私の城をですか」
「そうだ。森の中にだ」
「森。ドイツの森の中に」
「森は全てを癒してくれる」
王の森への憧憬はさらに深まっていた。今は。
「その中にこの卿の城はあるべきだからな」
「よいことです。しかし」
「しかし。何だ」
「そこに人はいるのでしょうか」
騎士がここで王に問うたのはこのことだった。
「私以外の人は」
「いない。いや」
言葉を打ち消して。そしてだった。
王はだ。こう答えたのだった。
「必要ない」
「左様ですか」
「私はもう人はいい」
こう言うのだった。人については。
「裏切り。そして醜い」
「あの芸術家ですらも」
「女性。何故女性に惹かれるのか」
ワーグナーの女性問題についてもだった。
苦い顔でだ。こう言ったのである。
「それがどうしてもわからないのだ」
「陛下はですね」
「女性を愛することは同性を愛することに感じる」
王独自の考えだった。まさにだ。
「それを愛することはできない」
「だからこそ男性を愛し」
「そして卿を愛する」
そのだ。白銀の騎士をだというのだ。
「そうなっているのだ」
「左様ですね。ただ」
「ただか」
「陛下はこの世におられます」
今話すのはこのことだった。
「ですからそれはです」
「卿の城は完全には再現できないというのか」
「そうです。それはわこあっておられるのではないのですか?」
「この世が。人が醜ければ」
どうかとだ。王は言った。
「せめてその場所にだけ至上の美を置きたいのだ」
「その理由もあってですね」
「私はこの世に。森の中に」
まさにだ。その中においてだった。
「卿の城、私の城を築きたいのだ」
「しかしそれならば」
どうなるか。騎士は王に対して話した。
「陛下は今のご婚礼は」
「あのことか」
「それはどうされるのですか?」
今この世で最もよく話されていることをここで王に問うたのである。
「そのことは」
「嫌だ」
王は苦い声で、一言で言った。
「もういい」
「ではやはり」
「あの婚約は破棄したい」
今はじめてだった。そのことをだ。
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