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戦国異伝供書
第十九話 急ぎ足その十二
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「あの時こそであった」
「しかしそれでも」
「あ奴はわしの首を狙うどころか」
「朽木殿を説得して」
「そして引き込んでくれた」
 織田家の方にというのだ。
「それを見るとな」
「あの御仁は」
「悪い者ではない、確かに主家を弱らせ公方様を弑逆してじゃ」
「大仏殿を焼きましたな」
「それでもじゃ」 
 まさにというのだ。
「あの者から悪いものはな」
「殿もですな」
「感じぬ、それでじゃ」
「信頼されてですな」
「重臣の一人にしておる」
 万石取りにしてもというのだ。
「その話もよく聞いておる」
「はい、それがしから見ても」
「そうしてもよいな」
「そう思いまする、しかしどうにも」
 ここで首を傾げさせて言う慶次だった。
「あの御仁がこれまでにした悪行は」
「それはか」
「どうにもです」
 それはというのだ。
「それがしには何故されたか」
「わからぬか」
「はい、どうにも」
 実際にというのだ。
「何故あれだけのことを為したのか」
「そのことはじゃな」
「猿殿も言われていましたが」
「わからぬか」
「はい、何故でしょうか」
「人には多くの顔がある」
 信長は慶次にこう答えた。
「そしてそうせねばらなう」
「その様な」
「そうしたものがあるからな」
 だからだというのだ。
「若しやだ」
「松永殿も」
「それに動かされてじゃ」
 そうしてというのだ、
「あの様にしたのやもな」
「そうなのですか」
「しかしわしもどうしてもな」
「松永殿はですな」
「悪人に思えぬ」
 信長もというのだ。
「何度会って話を聞いて目を見たが」
「それでもですな」
「悪人と思ったことはな」
「一度もありませぬか」
「うむ、何か陰があるが」
 それでもというのだ。
「悪いものは感じぬ」
「では何故ああしたことをされてきたか」
「それがわからぬ、蠍とは思えぬわ」 
 毒針を持つ剣呑な虫とはというのだ。
「もっとましな生きものであろう」
「例えるなら」
「一体あ奴に何があるか」
 それがというのだ。
「今気になっておる」
「左様ですか」
「一度よく話をしてみるか。茶を飲みながら」
「そのうえで」
「うむ、あ奴の本心を知りたい」
 こう言うのだった。
「何時かな」
「ではこの戦が終われば」
「一度話してみるか、皆止めるのは目に見えておるがな」
「特に平手殿がでしょうか」
「間違いないわ、爺は昔から心配性じゃ」
 信長は平手のことも話した、今も自身を支え織田家の屋台骨を支えてくれている彼はというのだ。
「それでじゃ」
「松永殿とお茶を飲むとなると」
「その都度止めるがのう」
「今度されるとしても」
「やはりな」
「止めまするな」
「そうす
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