436部分:第二十七話 愛を呪うその六
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第二十七話 愛を呪うその六
「陛下、宮廷にです」
「大公が来ておられるな」
「はい、ゾフィー様のことで」
「私は会えない」
王は言った。こう。
「今は」
「御病気でしょうか」
「そうしておいてくれ」
病気でだ。いいというのだ。
「その様にな」
「わかりました。それでは」
「時間が欲しい」
王はこうも言った。
「今は静かに考える時間がだ」
「御考えになられるのですか」
「そうしたい。せめてだ」
どうかとだ。王は言ってだった。
そのうえでだ。ホルニヒも下がらせてだ。一人になった。
そのまま静かにワインを飲む。そのまま一本空けもう一本空けた。そのうえでソファーの上で休もうとした。しかしここで、だった。
王にだ。声をかけてきたのだった。誰かが。
「陛下、宜しいでしょうか」
「誰だ」
「騎士です」
こうだ。その声は言うのだった。
「貴方のお傍に来たくて参りました」
「呼んだ覚えはないが」
王はその騎士に静かに言った。見ればだ。
王の前にその彼は立っていた。あの白銀の騎士がだ。
騎士は王の前に片膝をついてから。そのうえで恭しく言ってきた。
「貴方はいつも私を御呼びではないのですか?」
「そうだな。確かにな」
王もだ。そのことを否定せずにだった。
ソファーから寝ようとしていた身体を起こしだ。騎士に述べた。
「私はいつも卿を呼んでいる」
「その通りですね」
「もっと言えば卿と同じ心を持つ全ての存在をだ」
「私をですね」
「そう、卿をだ」
こう騎士に言うのだった。
「卿は一人だな」
「確かに複数の姿を持っていますが」
「だが一人だ」
何故一人なのかは。王と騎士はわかっていた。
「卿はチューリンゲンにいてもウェールズにいてもだ」
「神話の中のゲルマンにいても。そしてあのニュルンベルグにいても」
「近々その世界の卿を観る」
ニュルンベルグにいる彼をだというのだ。
「そうする」
「楽しみにされていますか」
「している」
実際にそうだというのだ。
「それは間も無くだ」
「そうですね。あの世界の私もまた」
「私は卿を常に呼んでいる」
そのことをだ。王は今自分でも認めた。
「卿と共にいたい」
「それも常ですね」
「そうだ。そしてだが」
王はだ。今騎士に言った。
「これからだが」
「これからですか」
「私はあるものを築きたいのだ」
「城ですね」
騎士はすぐに王の言葉に答えたのだった。
「それは」
「そうだ。卿の世界をだ」
そのだ。騎士の世界そのものをだというのである。
「この世に現したいのだ」
「そうお考えですか」
「私は何の為に生まれてきたのか」
そうした話にもなった。
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