第二章
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「おい、今日はな」
「阪神は横浜と戦いますね」
「今日も勝つからな」
「今日もですか」
「ああ、今日は大勝利だな」
まさにというのだ。
「横浜の」
「いやいや、阪神がですよ」
「勝つっていうんだな」
「はい」
中西の返事は今も同じだった。90
「絶対に」
「そうなる筈ないだろ」
「横浜倒して他のチームもやっつけて」
「巨人もかよ」
「あのチームも倒して」
球界、いや世界の癌であるこのチームもというのだ。
「そうしてですよ」
「優勝かよ」
「そうなりますから」
「御前本当にそう思ってるからな」
「思ってますよ、自力優勝が消えても」
例えそうなってもというのだ。
「私は諦めないですから」
「六位でもかよ」
「そうですよ、今日だって」
この六月一日もというのだ。
「勝ちますから」
「じゃあ負けたら笑ってやるからな」
「阪神をですか」
「ああ、そうしてやるからな」
絶対にと言うのだ、そしてだった。
試合がはじまった、するとこの日の阪神投手陣は乱調で。
いきなり先制点を許してしまった。
「まずいな」
「おう、まずいな」
一緒に観ている給養の士長の内村要が笑って言ってきた。やや面長で明るい顔立ちをしている。肌の色は白く目は黒目がちだ。
「阪神先制点取られたらまず負けるからな」
「そうなってます?」
「実際そうだろ」
現実を見ろと言うのだった。
「阪神は」
「気のせいじゃないですか?」
「打たないだろ」
とかくこのことが問題だというのだ。
「だから先制点取られたらだよ」
「負けですか」
「おう、しかも今日の投手陣の調子だとな」
それならというのだ。
「今日は惨敗するぞ」
「大逆転しますよ」
「阪神じゃ滅多にないことじゃねえか」
士長は中西に笑って言葉を返した、そしてこの言葉通りにだ。
阪神打線は打たなかった、この試合でも金縛りに遭ったかの様に打たない。そして横浜打線はというと。
マシンガン打線だった、ヒットを続けていき。
気付けば六対一となっていた、この状況に士長は中西に笑って話した。
「ほら見ろ」
「こんな時もありますよ」
「普段は三対一とか四対二で負けるからな」
阪神の長年伝統の負けている時のスコアだ。
「こんな惨敗はあまりないよな」
「あまり、ですか」
「負けることは多くてもな」
それでもというのだ。
「確かにピッチャーはそこそこいいからな」
「野球はまず投手陣ですよ」
中西はよく言われている言葉をここで出した。
「打たれたら意味ないですから」
「どれだけ点を取られないか、だよな」
「それが大事ですからね」
「阪神確かに点はあまり取られねえよ」
暗黒時代でもこのことはだった。
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