第一章
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ざまあ見ろ
給養の二曹工藤はいつも中西寛太に言っていた。
「阪神負けろ〜〜、負けろ〜〜」
「何ちゅうこと言うんですか」
「実際にいつも負けてるじゃねえか」
だからだとだ、工藤は中西に言うのだった。
「こう言っても問題ねえだろ」
「ありますよ、阪神今年優勝するんですよ」
「ずっと負けてるじゃねえか」
工藤はこうも言った。
「今年は開幕からだろ」
「横浜スタジアムのですか」
「横浜に三連敗じゃねえか」
それが二〇〇〇年阪神のスタートだった。
「それで今だってな」
「最下位だっていうんですか」
「だからだよ」
「阪神負けろってですか」
「言ってるんだよ、阪神が横浜に負けてな」
工藤は横浜ファンだ、入隊してからずっと横須賀にいるからだ。横須賀に横浜ベイスターズの寮とグラウンドがあるのだ。しかも海上自衛隊横須賀基地のすぐ近くだ。
「横浜が優勝したいからな」
「二年前に優勝したじゃないですか」
「まただよ」
再び優勝したいというのだ。
「だから言ってるんだよ」
「そうですか」
「そうだよ」
その通りだというのだ。
「これからも言うぞ」
「阪神負けろってですか」
「横浜のカモになってくれ」
こうも言う工藤だった。
「弱いままでな」
「いや、今年は阪神優勝しますから」
「そう言って毎年いつも最下位じゃねえか」
笑って言う工藤だった、そして。
阪神はこの日も負けていた、中西と工藤はこの日当直で中西は夕方居住区の掃除をしていたが工藤は自分のベッドのカーテンを開けてその中西に笑って言った。
「一回終わって三点差!」
「阪神三点も取ったんですか」
「取られたんだよ」
そちらだというのだ。
「弱いね〜〜、阪神!」
「三点差位ひっくり返せますよ」
「阪神が三点取ること少ないじゃねえか」
貧打線で有名だった、阪神が弱い時は常に打線が弱い。
「だからだよ」
「一回で、ですか」
「もう試合決まったよ」
「逆転しないっていうんですね」
「もうセリーグ五球団でいいだろ」
「巨人を抜いてですか」
「阪神だよ」
まさにこのチームだというのだ。
「阪神いらねえよ、じゃあそういうことでな」
「はい、掃除ですね」
「頑張れよ」
このことについてはこう言ってカーテンを閉めた工藤だった、そしてこの試合も阪神は負けて翌朝だった。
工藤は朝食の後でだ、詩文を読みつつまた言った。
「阪神いらねえ」
「セリーグにですか」
「抹消してやれ」
こう言って順位表の阪神の名前の欄をテーブルの上にあった黒マジックで消してだ。中西に言った。
「阪神弱いから抹消」
「サッカーじゃないんですよ」
「さっかーだととっくに降格だぞ」
Jリーグでは
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