433部分:第二十七話 愛を呪うその三
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第二十七話 愛を呪うその三
「おそらくあの城に行けるのだろう」
「あの城?」
「あの城というと」
「そこは」
「ローエングリンにある城だ」
ビスマルクはその城を見た。その目にだ。
「モンサルヴァートだ」
「あの聖杯の城ですか」
「ローエングリンがいるという」
「あの城ですか」
「あの方はローエングリンになられたいが」
これは常にだ。バイエルン王が思っていることだった。
そしてその思っていることをだ。さらに話すのである。
「しかしだ」
「しかしですか」
「あの方は」
「パルジファルなのだ」
それだというのだ。バイエルン王は。
「あの方はあのだ。聖杯城の主なのだ」
「何でもワーグナー氏は今構想中だそうですね、その作品を」
「今回はかなりキリスト教的な色彩が強いとか」
「そうした話を聞いています」
「そうなのですね」
「そうらしい。そしてだ」
さらにだというのだ。
「あの方は聖杯城に入られ王になられる」
「そのパルジファルだからこそ」
「そうなりますか」
「精神的には女性だ。完全に」
だからこそビスマルクにしてもオーストリア皇后にしてもなのだ。
バイエルン王は女性と見る。しかしなのだ。
「あの方は肉体的には男性だ」
「矛盾していますね、それは」
「あの方は」
「そうですか」
「そうだ。あの方のそれがだ」
どうなるかというのだ。
「あの方を聖杯城に導くことになる」
「しかしこのご婚礼は」
「それはですね」
「どうしても」
「そうだ。破綻してしまう」
ビスマルクはそのことは避けられないと断言する。
「そうなってしまうのだ」
「しかしそれでは」
「最早」
「様々なものが壊れてしまう」
その婚礼の破綻によってだ。他のものもだというのだ。
「そうなってしまう。その中でも特に」
「特に何が壊れますか」
「その中でも」
「あの方の御心だ」
王のだ。その心がだというのだ。
「壊れてしまわれる。そしてそれにより人を」
「人を?」
「人をですか」
「避けられるようになるだろう」
そうなることをだ。ビスマルクは既に読んでいた。
王のことを何処までも理解でき。そして何とかしたいと思っていた。だが彼はベルリンにいるプロイセンの人間だ。それならばだった。
「心を閉ざされ」
「王であってもですか」
「そうなられますか」
「王とて人だ」
時に忘れられていることをだ。彼は常に頭の中に入れている。
それでだ。今話すのだった。
「あの方もまた」
「それで心を痛められ」
「そうしてですか」
「人を避けられるようになりますか」
「そうなるだろう。この婚姻の破綻は」
それでまた言うのだった。
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