第二章
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「一軍の話だよな」
「一軍の話ですよ」
中西ははっきりと答えた。
「安心して下さい」
「安心するか、とにかくな」
「四連敗はですか」
「大きいことは言っておくからな」
「取り戻さないといけないですね」
「取り戻してから言え」
「じゃあ今から上陸して下宿先で阪神の試合観てきます」
中西は最後まで負けなかった、そしてだった。
上陸して艦を出て下宿先で阪神の試合を観ようとしたが。
試合がなかった、それでプレイステーションで野球ゲームに励んだが。
阪神で遊んで負け続けた、それで同居している同期の大居氏辰也に言われた。
「阪神じゃないとこんな負け方しないね」
「いや、たまたまだよ」
中西は大居氏の丸眼鏡がよく似合う丸いい顔を見つつ答えた、自衛官というよりは市役所の公務員といった外見で妙に愛嬌のある感じだ。
「僕のゲームが下手でね」
「それでかな」
「そうだよ、阪神は本当はね」
中日に三十点取られた敗戦もというのだ。
「強いから」
「今日はたまたまなんだ」
「こんな時もあるよ、ゲームの中だと」
その実況シリーズの最新作でもというのだ。
「いつも優勝してるし」
「そうなんだ」
「うん、今だってね」
まさにというのだ。
「昨日は井川完封したし八連勝してたんだよ」
「そうだったんだ」
「首位だよ」
彼がプレイしている阪神はというのだ。
「だからね」
「阪神は実はなんだ」
「強いから」
このことを力説するのだった、ゲームはもう次の試合に向かっていて中西は打順の組み方を考えていた。
「ゲームでもわかるから」
「だといいけれどね」
「じゃあまた試合するよ」
「頑張ってね」
こうしてだった、中西はまた試合に向かったが今度の試合は勝った。
それでだ、こう大居氏に言った。
「この通りね」
「快勝したね、中日に」
「七対一でね」
「そういうの見たら強いね」
「だから阪神は強いんだよ」
中西は大居氏にもこのことを力説した。
「だからね」
「実際にもだね」
「優勝出来るよ」
「だといいけれどね、あと君また出港だよね」
「二日後にね、また北海道の方に行くから」
「半月位あっちで」
「暫くここにいないよ」
海上自衛隊で艦艇勤務であるなら常だ、出港して暫く港そして下宿を離れることは。それは彼にしても同じなのだ。
「その間宜しくね」
「うん、またね」
「北海道前も行ったけれど」
「半年の間に二回行くってそうそうないよ」
「そうだよね、今度は」
二度目の北海道ではというのだ。
「札幌行くし」
「ラーメン食べる?」
「あとジンギスカン食べようか」
それもというのだ、こうした話を下宿先でしてだった。
彼は乗艦に乗って北海道に向かった、だが。
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