94話:墓穴
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ば勝機はあると思いますが......」
ヤン先輩が言葉を濁すのは、過去2回のイゼルローン要塞攻略戦は言ってみれば『増援が来たタイミングを見越した攻勢防御戦術』が取られている。だからこそ駐留艦隊は艦隊戦を挑んできたが、防御に徹した場合は要塞周辺の制宙権を維持すれば良いだけだ。要塞主砲の射線も正確には分析できていない状況では、こちらから艦隊戦は仕掛けられない。防御に徹っしられたら『並行追撃による要塞主砲の無力化』は実行不可能だ。
「敵さんも増援が遅れるのは分かっている以上、前例とは違う対応を取るだろう。要塞を無視して進撃する事は出来ない訳だから、艦隊戦も挑んでは来ないだろうな。難しい所だな」
「はい。仮に内戦に突入した場合、イゼルローン要塞にはかなりの期間独力で防衛できるような手配をリューデリッツ伯がするはずです。分の悪い賭けになると思います」
そこで香りを楽しむようにグラスを傾けてから、ヤン先輩は言葉を続ける。
「もう一つの懸念は内戦の結果、どちらの陣営が勝利するか?という点にあります。門閥貴族を中心とした保守派が勝利した場合は、帝国の民衆も将来に不安を持つはずですから、安定するまでかなりの時間がかかるでしょう。一方で、軍部を中心とした改革派が勝利した場合は、帝国の民衆にとって同盟は門閥貴族の共犯者というレッテルを貼られることになります。仮に戦争に勝利できたとしても、統治がおぼつかない状況になるでしょうね」
「そういう意味では嫌な噂を耳にしたな。フェザーンを通じて門閥貴族側から政府にアプローチが来ているらしい。フェザーンとしても過去に進駐された経験もあるし、今の体制では一番消費が見込める軍関連の利権から締め出されつつあるようだ。『敵の敵は味方』というが、その味方候補が『帝国の民衆の敵』となると大局を見誤ったという所だな」
「同盟の事だけを考えれば『内戦状態』を長引かせて、その間に戦力の拡充を図るのは分かりますが、門閥貴族と手を結ぶというのは納得できない部分がありますね。下手をすると同盟でも激論が交わされることになりそうですが......」
軍部でいえば、もともとは『帝国の圧政から民衆を解放する』というのは大きな大義名分だし、戦没者の遺族たちの心境も、門閥貴族と言うのは『圧政』の象徴の一つだ。どのタイミングで公表するのか?仮に公表しない場合は、改革派が勝利した場合、特大の爆弾を抱え込むことになる。帝国の民衆の怒りを背景に帝国軍が攻め込んで来る前に、政府がレームダックと化してしまうのではないだろうか。さすがに噂の段階だし、軍人だからこそ入手できた情報をむやみに外に流すわけにもいかない。
「フェザーン進駐の話も少しでも改革派の戦力を引きつけようという謀略の一環なのかもしれないね。だが、漏れ聞くところではフェザーン
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