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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
94話:墓穴
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がに決勝戦まで進めれば記念に一度足を運んでみても良いかもしれないけど、任務との兼ね合いもあるでしょうから無理される必要はないかもしれませんわね」

ヤン先輩は『エルファシルの奇跡』以来、軍部の若手の中ではかなり市民に顔を知られている。当初はサインを頼まれても慣れない笑顔で応えていたが、何かと心外な思いをしていたらしい。最近は人が集まるような場には意識して行かないようにされていたはずだ。

「ヤンにも事情があるからな。その辺にしておいてやってくれ。シャルロット達は寝付いてくれた。あとは男どもで好きにやるからゆっくりしてくれ」

『それではごゆっくりどうぞ』と言い残して、オルタンスさんはダイニングを後にした。場所をリビングに変えて、料理から酒を楽しむ時間に変わる。キャゼルヌ先輩が先導し、ヤン先輩がウイスキーの瓶を、俺がグラスとアイスペールをもって後に続く。ヤン先輩がキャゼルヌ先輩の家にお世話になる時は『シロン産の紅茶』か、『20年物のウイスキー』を差し入れる。自分が飲むのもあるだろうが、今夜は美食に美酒が続くわけだ。これで話題が『明るい』物なら良いのだが......。色々と漏れ聞いている所ではそうもいかないだろう。

「同盟軍の准将と中佐を手なずけるとは......。あいつの料理も大したものだ。それにしても昇進スピードだけ見たら期待のホープなんだろうが、きな臭い噂が流れているな。お前さん方は貧乏くじを押し付けられかねんからな。早速情報交換といこう」

ウイスキーのロックが入ったグラスがいきわたると、軽くグラスを交わしてから本題が始まった。

「これはビュコック提督から漏れ聞いた話ですが、統合作戦本部ではイゼルローン要塞の攻略案が検討されているようですね。シナリオとしては帝国の内戦を考えているようです」

「私は親父が情報元ですが、帝国が進駐した以上、同盟もフェザーンに進駐してそちらからの帝国侵攻を主戦派の議員がふれ回っているらしいですね」

キャゼルヌ先輩はグラスの中で氷を回しながら考え込んでいる様子だった。

「補給の面から考えると、フェザーン進駐には補給線を厚くしないと困難だな。エルファシルの復興が一段落して駐留基地も完成した以上、一度戦線を押し戻した上で、補給基地を最低2つは新設しないと実行できないだろう」

「イゼルローン要塞に関しては『内戦』を想定すれば可能性はゼロではありません。ただ、前回イゼルローン要塞攻略戦から既に20年近く経過しています。要塞の防衛戦力も改訂されている可能性が高いですし、実際、作戦の立てようも無いでしょう。
シトレー校長は帝国艦隊を並行追撃する事で、要塞砲を無力化することをお考えのようです。仮に帝国が『内戦状態』になれば増援部隊の到着は従来より遅くなるでしょうし、要塞主砲さえ無力化できれ
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