427部分:第二十六話 このうえもない信頼その二十
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第二十六話 このうえもない信頼その二十
「フランスが敗れる戦争に向かう今になってな」
「フランスは敗れそこから苦境が続く」
「そうなろうとしている今に至り」
「そうしてですか」
「愚かだった」
自省の言葉もだ。皇帝の口から出た。
「全てはビスマルクに見られていたのだ」
「戦争を狙う彼に」
「一部始終を」
「エムスで先走り過ぎた。あの時ビスマルクはだ」
そのビスマルクがだ。どうしたかというのだ。
「モルトケに聞いたそうだ」
「あのモルトケにですか」
「参謀総長の彼にですか」
「聞いたのですか」
「あの電報の話が彼の耳に届いた」
そしてなのだった。その時にだ。
「その時彼はモルトケと二人で食事を摂っていた」
「そしてその時にですか」
「彼に問うた」
「そうだったのですか」
「そうだ。我が国と戦争が出来るかどうか」
既にだ。それを尋ねていたというのだ。
「そしてモルトケは答えた」
「それで何と」
「あの男はどう答えたのでしょうか」
「今すぐにでもとだ」
こう答えたというのだ。そのモルトケは。
「そして今に至るのだ」
「では最初からですか」
「あの男は我が国との戦争を狙っていた」
「決して国民の激怒が根拠ではなく」
「既に」
「戦略だ」
それだとだ。ナポレオン三世は言った。
「既にそれで考えていたのだ。思えば」
「思えば?」
「思えばといいますと」
「それも当然なのだ」
プロイセンがフランスとの戦争を狙うこともだ。そうだというのだ。
それが何故かというとだ。ナポレオン三世は皇帝らしくなく俯いてしまいそのうえでだ.。言うのだった。
「ドイツの統一の為に必要なことはだ」
「ドイツ統一ですか」
「その為にですか」
「必要なこととは」
「まずは経済的な統合だ」
最初に来るのはそれだった。
「ドイツ関税同盟だ」
「あれですね」
「プロイセンが中心となっている」
「あの同盟ですか」
「そうだ。またしてもプロイセンだが」
そのプロイセンが軸になってだ。北ドイツから南ドイツまで拡大していっている経済統合の組織だ。まずはそれがあってこそだというのだ。
「序曲として文化的な統合もあるがな」
「ゲーテですね」
「そしてカント」
「ヘーゲルもまた」
音楽家だけでなく哲学者まで挙げられる。ドイツの誇る哲学者達だ。
「フィヒテもドイツ国民の統合を訴えていましたが」
「まずはその文化的な統合が序曲だったのですか」
「ワーグナーも然りだ」
他ならぬバイエルン王が愛する彼もその序曲の中にあるというのだ。
「文化が序曲としてあり」
「それからですか」
「経済的統合」
「それですか」
「それが第一幕だ」
序曲の次に来るものは第一幕だ。
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