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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
一族の物語 ―交わした約束― @
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うな悲鳴を上げるレティシア。その眼前に立ちながら一輝は一切表情を変えはしない。

もといた世界で日常的に行っていた行為。箱庭に来てからは頻度こそ減ったもののこれといって思うところはなく行っていた行為。見るからに姿の違う者であっても、二足歩行をする者であっても、見た目だけで言えば人間と変わらないものであったとしても、いっそ人間であろうとも。自分たちとの意思疎通が可能な存在を、一切の躊躇いなく殺してきた一輝が、何故この程度のこと……同じコミュニティに属し、幾度の死線を共にした仲間の悲鳴程度のことで、感情を動かされようか。
さらに手を重ねる。

「金行札、聖銀錬成。急急如律令」

手中の札は聖銀の杭となる。拘束具はすでに足りている以上、それの使い道は一つしかない。磔にされたレティシアの胸部、その奥にある心臓がターゲット。
杭を引き、突き立てようとして……背後からの蹴りを杭で受け止める。

「おっ、間に合ったか」
「どこが……!」

耀の蹴りを受け止めた杭は砕けて、続けて放たれた二撃目を跳んでかわす。耀の一撃を受ける危険性とここまで削ったレティシアへとどめを刺す価値。その天秤は、容易に傾いた。

「いやいや、これでも褒めてる方なんだぞ?レティシアと一緒に攻めてきてまとめて潰してやれば終わり、って思ってたからな」
「それは、さすがになめすぎでしょ」
「そうか?ま、だとしたら謝っとく」

そう言いながら、ギフトカードに手をかざし師子王を抜く。

「日ノ本の国に伝わりし、大いなる巨人よ。我が国を作りし、偉大なる巨人よ。今ここに、その所在無き身を、我が眼前に表わさん」
「やりなさい、アルマ!」

一輝の体より輝く霧が現れ、巨人の姿を構成しようとする最中(さなか)。アルマに乗る飛鳥が己が騎獣へ向けて命令を下す。言霊の神格を飲み込んだ従者はその命令を忠実に実行するが……それは、一輝には突き刺さらない。

「突き破りなさい、これ以上何かされる前に攻め切る!」
『ええい、無茶を言う!!』

しかし、それが事実だとはわかっているのだろう。アルマはその命令をこなそうと宙を蹴り、身に纏う雷電をより強いものへと変えていく。されど、それを受け止める巨人も尋常の存在ではない。国の形を作り出した巨人。神による国造りへと対抗する形で生み出された巨人信仰の具現である。
巨人故に、その動きはとても鈍い。それは事実だ。アルマが彼の周りを跳び回って攻撃を繰り返せばいずれ倒されるだろう。だが、今それをやれるだけの時間的余裕は存在しない。それゆえの、一点突破。

自らの腹へ突き刺さろうとしている存在、それが動かないのであればダイダラボッチにも打てる手は存在する。体の大きさに伴った高い耐久力、それに任せて腹部へ突き刺さる小さなヤギをつかみ取りにか
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