425部分:第二十六話 このうえもない信頼その十八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二十六話 このうえもない信頼その十八
「そこまで強いからだ」
「我が国では敗れる」
「そうなると」
「あの国に勝てるとすればロシアだけだ」
圧倒的な数を誇るその国だけだというのだ。
「他にはいない」
「しかしです。誰もがです」
「フランスは勝つと言っています」
「そうならないのですか?」
「我が国は」
「やはり敗れる」
それでもナポレオン三世はまた敗北を口にするだけだった。首を横に振って。
「あの国にはな」
「では陛下がです」
「それを止められますか」
「陛下御自身が」
「そうしたい」
ナポレオン三世の偽らざる本音である。しかし。
全てはその本音通りにいくものではない。今がまさにそうだった。
彼はだ。項垂れてこう言った。皇帝の座から。
「だが。若し朕が止めようとする」
「この流れを」
「それをすれば」
「それでも止まりはしない。戦争への流れは」
皇帝である彼ですらだ。止められないものだというのだ。
そしてだ。さらにだった。
「しかもだ。若しこの流れを止めようとする者がいれば」
「皇帝である陛下でも」
「それをしたならばですか」
「そのまま飲み込まれる」
濁流の中にだ。戦争へのそれに。
「誰もそれを止めようとする者を許しはしない」
「では陛下が止められれば」
「民衆は陛下御自身をですか」
「まさか」
「そのまさかだ。民衆の力は絶大だ」
それを使って皇帝になったからこそわかることだった。彼はナポレオンの甥という血筋によって世に出て民衆の人気を取りそのうえで皇帝になったのだ。だからこそだった。
その民衆の力を見てだ。今言うのだ。
「それに抗うことはできない。それに」
「プロイセンもある」
「そうですね」
「我が国の民衆も抑えられず敵は戦争を欲している」
ビスマルクの顔がだ。彼の脳裏に宿っていた。
「最早それではだ」
「戦いしかない」
「そうなのですか」
「最早誰も止められない」
皇帝は苦々しげに言った。
「そしてフランスは敗れる」
「必ずですね」
「そうなると」
「そしてドイツは統一される」
このこともだ。間違いないというのだ。
「全てはビスマルクの書いている通りだ」
「そのうえでドイツ帝国ができですか」
「その中にあれだけの多くの国が入る」
「三十五の君主国と四つの自由都市」
これがだ。ドイツの全ての国家だった。
「その全てがですか」
「ドイツの中に入る」
「そのうえでの統一ですか」
「そうだ。かつてのドイツは」
どうだったか。ナポレオン三世はこのことも話す。
「三百以上に別れていたが」
「それがですね」
「三十九にまでなり」
「そして一つになる」
「これが時代の流れですね」
「そのド
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ