第八十話 繁栄の中でその六
[8]前話 [2]次話
「殺すつもりはないからな」
「殺さなくてもってことだな」
「巨人達も多く倒してきたしだ」
「これまでか」
「魔物を倒してきた」
「俺達なんかはか」
「ならず者達とも戦ってきた、わかるな」
「ああ、あんたは強い」
頭にもわかった、英雄のこのことが。それで彼に言うのだった。
「俺達が束になっても敵わないな」
「だからか」
「やりはしないさ」
戦うことはというのだ。
「絶対にな」
「ではか」
「ああ、ただな」
「ここに来たからか」
「遊んでいくかい?」
頭は英雄にこうも言ってきた。
「賭場だからな」
「博打をしてみろっていうのか」
「そうだ、どうだ」
「俺は博打はしない」
英雄は頭に即座に返した。
「そうした趣味はない」
「そうなのかよ」
「しかしだ、食うものは食う」
こう言いはした。
「賭場にあるものもな」
「ああ、だったらな」
「鉄火巻きだな」
「それはあるぜ」
頭はその目を鋭くさせて彼に言った。
「金を払えばな」
「食えるか」
「あと酒もあるしな」
賭場、博打をする場の常としてこれもあるのだ。博打に酒は最早同時にするものというのはどの世界でも同じか。
「菓子もあるぜ」
「それもあるのか」
「飲めないお客さんもいるからな」
だからだというのだ。
「それでだよ」
「菓子もあるか」
「ああ、どっちがいいんだ?」
「さっき蕎麦を食ってきた」
英雄は頭にこのことから答えた。
「鉄火巻きは今はな」
「蕎麦で腹が膨れてか」
「あまり食いたくない、だから酒もだ」
こちらもというのだ。
「今はいい、しかしな」
「あれだな、甘いものはだな」
「別腹だ」
頭にこの言葉を出した。
「それでだ」
「菓子をか」
「貰おう」
「よし、じゃあ饅頭なり羊羹なり出すな」
「そしてだな」
「菓子を食いながら賭場を見てくれ」
その遊ぶ様子をというのだ。
「丁半なり花札なりな」
「どっちもしているのか」
「ああ、どっちも好きなのを見な」
丁半でも花札でもというのだ。
「そうして楽しみな」
「ではそうさせてもらう」
「そうしている間にな」
「俺が会いたいと言う」
「その人を呼んでくるな」
「今ここにいるな」
「いるさ、けれど今はちょっとな」
頭はここでだ、英雄に対してややバツの悪い感じになって述べた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ