424部分:第二十六話 このうえもない信頼その十七
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第二十六話 このうえもない信頼その十七
その彼の曲をだと。王は所望したのだ。
「あの第一幕のな」
「最初の歌ですね」
「あの歌を聴いていると自然と心が弾む」
そうなるからだというのだ。
「不思議だな。モーツァルトの音楽は」
「そうですね。本当に」
「魔術だ」
そのものだとも。王はモーツァルトを賞賛した。
「あの音楽は心地よい魔術だ」
「ではその魔術をお楽しみ下さい」
「そうしよう」
こうして何とか憂いを消そうとする王だった。だが。
ワーグナーのことだけでなくだ。憂いの種はありだった。王の憂いは続いていた。
ドイツでもだ。次第にだった。
「戦争だ!」
「フランスを倒せ!」
「フランスは敵だ!」
こう主張する者が増えてきていた。ドイツ全域でのフランスへの反感は次第に強まっていた。
そしてフランスでもだった。その彼等も。
「ボタン一つに至るまで不備はない」
「軽い気持ちでこの責任を引き受けよう」
こうした言葉がだ。高官達から出て来ていた。
「プロイセン、そしてドイツ諸国には勝てる」
「我がフランスが負ける筈がない」
「勝つのは我等だ」
彼等もだ。戦いを見だしていた。
どちらも戦い勝つことを確信していた。しかしである。
フランス皇帝ナポレオン三世はだ。親しい者達にこう漏らしていた。
「まずいことになっている」
「プロイセンへの反感が強まっていることですね」
「そのことですね」
「そう、それだ」
まさにそのことだというのだ。
「このままでは大変なことになるぞ」
「戦争ですね」
「それはもう避けられないのでは?」
「双方共最早止まりません」
「それでは」
「敗れる」
ナポレオン三世は難しい顔で言った。
「敗れるのは我が国だ」
「フランスだと」
「そう仰るのですか」
「プロイセンは強い」
彼にはわかっていたのだ。プロイセンのあまりもの強さが。それにだった。
「あの国にはビスマルクもモルトケもいる」
「人材もいる」
「だからですか」
「兵の移動は速く大砲も多い」
鉄道、そしてグルッフ社の大砲だ。プロイセン軍は兵が強く人材がいるだけでなくだ。技術もあれば装備もいい、全てにおいて突出していたのだ。
それをだ。彼は既に見ていたのだ。そのことも話すのだった。
「私はかつてオーストリアとあの国の戦争について言ったな」
「何年もかかる」
「そうですね」
「そうだ。実際にそう思っていた」
彼だけでなくだ。他の者も思っていたことだ。
だが実際はどうだったか。それが彼に敗北を言わしめていたのだ。
「しかしプロイセンは八週間で勝った」
「オーストリアを次々に破り」
「そのうえで」
「ウィーンに入城しようと思えばできた」
こ
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