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永遠の謎
423部分:第二十六話 このうえもない信頼その十六
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第二十六話 このうえもない信頼その十六

「それは間違いない」
「フランスとの戦争で統一されるからですね」
「後の戦争は全てにおいて無意味だ。そして」
「そして?」
「あの方はこれから戦争の原因になるものは全て取り除いていかれる」
「全てですか」
「間違いなく平和を主張される」
 しきりに戦争を主張していたのが一転してだ。そうなるというのだ。
「あの方がおられる限りもう戦争は起きないだろう」
「その後は」
「わからない」
 未来についてはだ。王もすぐには答えられなかった。
 だが、だ。王はまた憂いの目でだ。ホルニヒに話した。
「しかし永遠の戦乱がないことと同じでだ」
「永遠の平和もですか」
「それもない。また戦争は起こる」
 それは間違いないというのだ。戦争が起こることはだ。
「その時に欧州がどうなるかだ」
「そのことが問題ですか」
「欧州で。三十年戦争の様な恐ろしい戦いが起これば」
 その危険をだ。王は完全に否定してはいなかった。
 それでだ。王はさらに話すのだった。
「その時は美も芸術もだ」
「破壊されてしまうのですね」
「多くの者が死に」
 そしてだというのだ。さらに。
「多くのものが失われるだろう」
「戦乱によってですか」
「そうだ。願わくばそうしたことは起きないで欲しい」
 心からの切実な願いだった。王はあくまで戦争を嫌う。
 しかしその嫌うものが迫っていることもわかっていた。それでなのだった。
「大砲も騎兵も好きにはなれない」
「そういえば陛下は銃も」
「剣は好きだ」
 王は射撃は苦手だ。だが剣を扱うことは得意だ。それにも理由があった。
「剣は芸術でもある」
「そしてスポーツでもですね」
「だからいいのだ」
「乗馬もまた」
「そうだ。そして火薬も嫌いではない」
 王の嫌う大砲や銃を生み出すそれもだというのだ。
「花火が全ての国の夜を常に飾れば」
「陛下は満足ですか」
「できないことだ」
 その現実はわかっているのだった。どうしても。
「だがそれでもだ」
「陛下は望まれますか」
「そうだ。戦いなぞなく美が全てを覆えば」
 言いながら。またあの騎士を思い出す。
「この世もどれだけ素晴しいだろう」
「そう思われるのですね」
「変わらない。この考えは」
 王の中ではだ。そうなのだった。
 そのことを話してだ。さらにだった。
「私はだ」
「では陛下」
 ホルニヒは王の憂いを癒そうと考えた。それでだ。
 王に対してだ。こう言ったのだった。
「今はです」
「今はだな」
「モーツァルトを聴かれますか?」
 あえてワーグナーではなくこの音楽家のものにしたのだ。
「そうされますか?」
「そうだな。それではだ」
「はい、それでは」

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