422部分:第二十六話 このうえもない信頼その十五
[8]前話 [2]次話
第二十六話 このうえもない信頼その十五
「そうだが」
「実際は」
「違う。フランスではプロイセンには勝てない」
「プロイセンはそこまで強いですか」
「オーストリアを八週間で破った」
これがプロイセンのしたことだ。先のオーストリアとの戦争もだ。数年はかかると思われていたのが僅か八週間で終わっているのだ。
しかもだ。王はその戦争で既にだった。
「私はあの戦争は読んでいた」
「そうでしたね。陛下は」
「プロイセンは強い。それに」
それに加えてだった。プロイセンの精強さに加えて。
「あの方もおられるからな」
「ビスマルク卿が」
「あの方は誤解されることが多い」
「誤解ですか」
「あの方は好戦的ではないのだ」
俗にだ。ビスマルクは戦争を好むと見られていた。学生時代に二十回以上の決闘に勝利を収め乱暴者とさえ言われたこともそれに影響している。
「戦争は必要だからこそする」
「プロイセンにとって」
「そしてドイツにとって」
だからこそするというのだ。戦争を。
「それだけなのだ」
「ではむしろ」
「あの方は理知的だ」
ビスマルクのその本質を。はっきりと指摘してみせた。
「非常にだ」
「理知的ですか」
「必要なことだけをされる」
それも冷静に。ビスマルクはそうした男だというのだ。
「それだけなのだ」
「ですか。ではフランスとも」
「ドイツを築く為に。我等ゲルマン民族の国家を築く為に」
戦い勝つ。それだけだった。
「必要な戦争なのだ」
「必要な戦争もあることは」
「それはわかるな」
「私もです」
わかるとだ。ホルニヒも答えることができた。
「そのことは」
「ならいい。だが」
ここでだった。王は表情も曇らせてだった。こう言ったのである。
「しかし。私は」
「陛下は」
「それでも好きになれない」
これが王が今言う言葉だった。
「どうしてもだ」
「戦争をですか」
「戦争は何を生み出すか」
「統一の他にですね」
「破壊。そして殺戮」
そうしたことに対してはだ。王は嫌悪を見せる。
そのうえでだ。こんなこともだ。ホルニヒに話した。
「醜いものが浮き出てその牙と爪が傷跡を見せる」
「傷、ですか」
「人を殺し街も田園も壊してしまう」
王の思うだ。美しいものに対してそうするというのだ。
「戦いによりどれだけの城や宮殿が壊されてしまったか」
「そのことを思うとなのですね」
「戦争は好きにはなれない」
これが追うの結論だった。
「どうしてもだ」
「例えそれが必要なことであってもですか」
「少なくともビスマルク卿はこれで最後にされる」
そのだ。戦争をというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ