第三章
[8]前話
「バスや道のことを聞くと」
「バスは家の車があればいけるし道なんかね」
「迷ってもか」
「すぐに頭に入るわよ」
そうなるというのだ。
「子供達だってね、だからね」
「この家にするのか?」
「これからそのお家に案内して下さい」
美代子は夫の戸惑う声をよそに業者に顔を向けてお願いをした。
「是非」
「そうされますか」
「はい、それから決めさせて下さい」
こう言って業者にその家まで案内してもらうことにした、勝呂はまだ考えるべきだと言っていたが妻の押しに負けた。
そうしてその家に行くと問題のバス停まで近く石の階段から家と庭に上がり家のフェンスも丈夫で庭は家の区割りに出ていた通り高くしかも奇麗なものだった。
家の中も区割り通り広い部屋が多くしかも傷んでおらず奇麗なものだった。風呂もトイレも清潔で使いやすい感じだ。家族五人がゆったりと暮らすには充分だった。ガレージも屋根付きで広かった。
全て、それも隅から隅まで見てだった。美代子は案内してくれた業者に言った。
「契約します」
「正式にですか」
「はい、事務所に帰ったら」
その時にというのだ。
「手続きをさせてもらいます」
「おい、そんな急に決めてもいいのか」
勝呂はここでも戸惑いつつ妻に問うた、戸惑いが顔にも出ている。
「バスは少ないっていうし道だって」
「そういうのは小さなことでしょ」
「小さいか?」
「さっき言った通りよ、バスで十分なら充分よ」
それでというのだ。
「しかもバス停から近いし小学校や中学校にも近いでしょ」
「まあそれはな」
「だったら問題なしよ、迷っているうちに他の人が買ったらどうするのよ」
「それは」
そう言われると勝呂もだった。
「やっぱり」
「そうでしょ、迷う前にね」
「買うっていうんだ」
「そう、契約してね」
このことを決めてというのだ。
「それがいいのよ、じゃあね」
「ここはなんだ」
「もう決まりよ」
夫を抑え付けていた、完全に。
こうして勝呂一家は家を買うことになった、そしてその暮らしは家族全員が暗しについてはほとんど何も言わないものだった。美代子の即断は正しかったと後に家族全員が言ったことは言うまでもない。
家までの道 完
2018・11・21
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