418部分:第二十六話 このうえもない信頼その十一
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第二十六話 このうえもない信頼その十一
バイエルンでは誰もがだ。ワーグナーを攻撃した。
「あの男はやはり山師だ」
「陛下をたばかる詐欺師だ」
「国費を食い潰すだけではない」
「陛下も騙す男だぞ」
「己の保身の為に」
これが事実だからどうしようもなかった。そしてその王は。
王宮の奥深くに篭もる様になった。そのうえで一人ローエングリンの音楽を聴きながらだ。共にいるホルニヒに話したのだった。
「信じていても」
「ワーグナー氏のことでしょうか」
「人は自分を信じている相手を裏切るのだな」
こうだ。下を見て言うのだった。
黄金と赤のソファーに座っている。そこで傍に控えるホルニヒに話すのだった。
「私は」
「陛下、そのことは」
「わかっている」
わかってはいる。しかしなのだった。
憂いは消えずにだ。それどころか増していくその中でだ。
沈みながらだ。こう話すのだった。
「全てな」
「では」
「この音楽をはじめて聴いたのは」
王はさらに話す。王のその心にもつながるものだった。
「私が十六の頃だった」
「その時にはじめてなのですね」
「そうだ。その時に彼に出会ったのだ」
目にある世界が広がった。青い清浄な世界が。
「川から小舟に乗り現われる彼に」
その彼も見た。白銀の騎士を。
「あの時で全ては決まったのだ」
「そして今に至るのですか」
「そうだ。私は今も見ている」
ホルニヒには見えず彼だけに見えるものをだった。
「彼を。だが」
「それでもですか」
「こうなることはわかっていたのだ」
ホルニヒの気付かないうちにだ。王は話を変えた。
「しかしそれでもだ」
「ビューロー夫人は潔白ではないのですか?」
「そう、潔白だ」
真実を知っていてそのうえでの言葉だった。
「潔白なのだ」
「では。そう思われた方が」
「そうだな。しかし」
「しかし?」
「私は純粋に信じたかった」
だがそれでもなのだった。王は。
「それは確かだ」
「陛下、今は」
ホルニヒは王を気遣いだ。そしてだった。
王にだ。こう言ったのだった。
「庭園に行かれますか」
「あの庭園だな」
「はい、そこで虹を見ましょう」
こうだ。王に対して言ったのである。
「そうしましょう」
「そうだな。それがいいな」
王もだ。ホルニヒのその提案に頷いたのだった。
そのうえで二人であの人工庭園に向かった。庭園はアラビアやスペインがあり南欧の植物や花で満たされていた。そしてだった。
霧と光の魔術でだ。虹も生み出された。その虹を見てだ。
王はだ。ホルニヒに話したのだった。
「虹は橋だったな」
「北欧神話でしたね」
「そうだ。ひいては我々の神話だ」
ゲルマンの神話と北欧の神
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