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横須賀の二〇〇〇年阪神
第三章
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「時々打つけれど三割打ったことねえだろ」
「守備と肩はいいですけれど」
「あいつは安定感がねえんだよ」
 それが問題だというのだ。
「だからな」
「イチロー並にはですか」
「打つかよ」
 到底というのだ。
「どう考えてもな」
「三割六分打てませんか」
「三割どころかな」
 それこそというのだ。
「二割七分打つか?」
「今年から打ちますよ」
「そんな筈ねえだろ、あと御前七月のはじめにこの船降りるよな」
「次の実習は航空隊です」
「厚木だったよな」
 まさにというのだ。
「そうだよな」
「はい、どんなところですか?」
 中西は工藤にその次の実習先について尋ねた。
「一体」
「いや、俺はずっと船だったからな」
 そこでの勤務だからとだ、工藤は中西に答えた。
「悪いけれどな」
「航空隊のことはですか」
「知らないんだよ」
 こう中西に話した。
「他の奴に聞いてくれ」
「航空隊知ってる人にですか」
「確か気象の奴が詳しかったな」
「聞いてみます」
「ああ、あっちじゃしっかりやれよ」
 厚木では、と言う工藤だった。
「いいな」
「厚木じゃ、ですか」
「そうだよ、しっかりやれよ」
 工藤は中西に笑いながら言った、そしてこの日中西は艦内を歩いている時に自衛隊では実は禁止されている君が代と軍歌以外の歌を歌ってしまった。
 それは六甲おろしだった、するとたまたま前を歩いていた泉屋が立ち止まり彼の方を身体ごと向けて怒って言った。
「最下位だよ!」
「最下位ですか」
「今実際にそうだろ!」
 艦内で国歌、軍歌以外の歌を歌ったことは言わなかった。
「今年もだよ!」
「ううん、そうですか」
「実際にそうなってるじゃねえか」
「ですからここから大逆転です」
「そんな筈ねえだろ!」
 こう言ってだ、泉屋は中西の前を去った。中西はとかく阪神のことで話題を作っていた。そうしてだった。
 遂に船を降りるときになったが。
 この時の挨拶でだ、中西は泉屋に笑って言った。
「お風呂入った時言われましたね」
「ああ、言ったよ」
 泉屋は中西に笑って応えた。
「アホ!ってな」
「あの言葉忘れらないですよ」
「俺もだ、けれどまだ言うんだな」
「阪神今年は優勝ですよ」
「そろそろ自力優勝消えるぞ」
 その事態に陥ってしまうというのだ。
「それでもか」
「ですからここからですよ」
「大逆転か」
「そうなります」
「御前それ次の場所でも言うか?」
「厚木でもですか?」
 中西は次の場所でもと言われてすぐに応えた。
「私次あそこで実習ですけれど」
「言うか?」
「言うかも知れないですね」
 中西も否定しなかった。
「やっぱり」
「勝手に言ってろ、しかし次の場所でも頑張れよ」
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