第一章
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横須賀の二〇〇〇年阪神
「阪神今年は優勝ですよ!」
「アホ!」
泉屋藤吉海曹長は曹候補学生である中西寛太海士長に停泊中の護衛艦の風呂場の中で即座に言い返した。二人共当直で艦内にいるのだ。
「今何位だ!」
「六位ですけれど」
「最下位だろうが!」
六位はまさにそれである。
「一体何年連続で最下位だ!」
「ええと、今二年ですけれど」
「それで今年もそれで何が優勝だ!」
お互いに全裸で心も全裸になり合って言っている。
「だからアホって言ったんだ!」
「海曹長が燕党だからじゃなくて」
「あのチームが優勝するか!」
泉屋曹長は言い切った。
「そんなこと有り得るか!」
「絶対ですか」
「当たり前だ!」
これが風呂場のやり取りでだ、中西は曹長の四角い顔型と小さな目が印象な顔での全力の反論を聞いてから身体を洗ってだった。
居住区に戻るとすぐに工藤主男二等海曹が自分のベットのカーテンを開けて彼に笑って言ってきた。
「おい、今日も負けたぞ」
「巨人がですか」
「阪神がだよ」
このチームがと、剽軽な顔立ちで一八〇の背にモアイの様な顔の中西に答えた。
「横浜に十対一でな」
「十対一って」
「佐伯の満塁ホームラン出たぞ」
「他に六点取られて」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「負けたぞ」
「まあそういう時もありますよ」
「おいおい、しょっちゅうだろ」
工藤は中西に笑って帰した。
「阪神は」
「まだこれからですよ」
「これからって六月になったばかりだからか」
「まだ六月一日ですよ」
ペナントの折り返しも通っていないというのだ。
「ですから」
「これからか?」
「はい、これからです」
阪神は巻き返す、中西は語った。
「阪神は」
「野村の采配でか」
「勝ちまくって」
そうしてというのだ。
「優勝しますよ」
「けれど去年も最下位だったじゃねえか」
工藤の突っ込みは無慈悲なものだった。
「御前この船に去年いなかったけどな」
「教育隊と術校にいました」
海上自衛隊術科学校だ、四つありそれぞれの職種の専門的な技術や知識を学び習得する場所である。
「それで今年は、ですからね」
「それで去年もだろ」
「残念でしたね」
「だったら今年もね決まってんじゃねえか」
工藤は中西に笑いながら言った。
「阪神最下位だよ」
「今年もですか」
「ならねえ筈ねえだろ、あと御前明日な」
「明日?」
「ちょっと服出してくれ」
自衛隊のそれをというのだ。
「つなぎの作業服な、船の倉庫の奥にあっただろ」
「それですか」
「ああ、俺のサイズであったらな」
「わかりました、じゃあ書類の手続きこっちでしときますんで」
「頼むぞ、
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