第三章
[8]前話
「それでだよ」
「だからですか」
「まなみを好きになっているんだよ」
「私の何処がいいのか」
「だから人は案外大きくて小さい」
またこのことを言う従兄だった。
「見られるものもな」
「大きくて小さいですか」
「まなみのいいところも見られたんだ」
「大きくですか」
「自分はないと思っていてもそれが案外大きくて」
それでというのだ。
「見てもらってな」
「慕ってもらっているんですか」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「だからな」
「私を慕ってくれているんですね」
「そうだよ、僕だってまなみは嫌いじゃないし」
「私の何処が」
「いつも助けてくれるし公平で裏表がないからだよ」
そうしたことをしてもらって性格を見てもというのだ。
「だからだ」
「それで、ですか」
「嫌いじゃないよ、まなみは自分で思っているよりも実はずっと暖かくて」
「見てくれている人が見ていてくれて」
「慕っているんだよ」
「だとすれば嬉しいです」
まなみはここまで聞いて述べた。
「本当に」
「そこで嬉しいと思うことが何よりの証拠だよ」
「心があるということの」
「暖かい心がな」
「若しそうなら」
まなみは従兄のその言葉を聞いてだ、自分もお茶を手に取りつつ話した。今も奇麗な緑色のお茶を淹れている。
そしてだ、そのお茶を口に近付けつつ話した。
「嬉しいです」
「そうか、嬉しいか」
「そう感じます」
こう言ってお茶を飲んだ、その時だった。
まなみの口元は僅かで一瞬だが確かに笑った、その口元を見てだった。
従兄は笑みになってだ、こう言った。
「僕も見せてもらったよ」
「何をですか?」
「暖かさをね」
まなみの中にあるそれをというのだ、それをまなみ自身に言った。そうして笑みを浮かべて自分もお茶を飲むのだった。まなみが淹れてくれたその美味しい抹茶を。
隠した心 完
2018・6・17
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