416部分:第二十六話 このうえもない信頼その九
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第二十六話 このうえもない信頼その九
「神に誓ってです」
「そのうえで言えます」
今度は神の存在を口にしだした。
「私達は潔白で」
「何の疚しいところはありません」
こうだ。あくまで言うのである。
「周りが。心ない者達がです」
「言っているだけです」
その話を聞いてだ。近衛兵達も侍従達もだ。
顔をあからさまに顰めさせてだ。軽蔑しきった目で彼等を見つつ。それでまた囁いた。
「よく言えるものだ」
「誰もが知っているというのに」
「恥知らずにも程がある」
「醜いですな、ここまでいくと」
「全くです」
「あそこまで嘘を言うと」
嘘は只でさえ醜いものだ。しかしそれでも今はだった。
その嘘の中でもだ。とりわけなのだった。
「陛下を。自分達の庇護者を騙すとは」
「しかも自分達の保身の為に共謀して」
「それで言うとは」
「自分達を信じたい陛下をあえて」
「そうするとは」
「何という醜さか」
ワーグナー達はその醜さを露わにしてだ。今王の前にいるのだ。
ワーグナーもビューローも弁明を続ける。とりわけコジマは。
必死になりだ。王に対して釈明、偽りのそれを述べ続けていた。
「私の子は夫の子です」
「そうです。その通りです」
その『夫』もここで言った。
「私と妻の間の子です」
「このことを今あえて申し上げます」
コジマは演技を続け言っていく。
「私達は何もありません」
「これは本当のことです」
「それで陛下」
コジマは一歩踏み込んだ。そのうえで言うことは。
「御願いがあります」
「御願い!?」
「まさかと思うが」
「またあれをか」
「陛下にしてもらうというのか」
聞こえないようにはしているが。それでもだった。
近衛兵達や侍従達の言葉はそのまま矢となりワーグナー達に突き刺さる。しかし彼等はそれに気付かないふりをして、おそらくワーグナーはそうした矢を普通に取り払いながら王の前にいる。
その中のコジマがだ。今言った。
「このことを陛下がお話して下さい」
「やはり言うか」
「陛下に揉み消しを御願いするか」
「事実の揉み消し」
「それを公に」
また言う周囲だった。
「陛下が仰れば全ては公のものになる」
「それで国の者は黙ってしまう」
「例えそれが事実とは違っていても」
「そうなってしまう」
だからこそだった。コジマも今あえてそれを言ったのだ。
身振り手振りまで踏まえてだ。そうしてだった。
王に対して言う。このことを。
「そうして頂けるでしょうか。この忌まわしい誹謗中傷に対して」
「誹謗中傷ではない」
「それは事実だ」
「紛れもない事実」
これはバイエルン全体での評価だった。
「それでも言うか」
「この期に及んで」
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