第一章
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隠した心
鬼堂院まなみは世界で三本の指に入る大財閥の総帥の孫だ、総帥の孫は彼女以外にも何人もいるがまなみもその一人として既に財閥の経営に携わっている。その為幾つかの企業で重役も務めており学生ながら多忙な日々を送っている。
そのまなみにだ、多くの者はこう評していた。
「頭はよくて冷静なんだけれどな」
「人間味が足りないよな」
「冷たい?」
「機械みたいだよな」
黒髪ストレートのロングヘアで眼鏡の整った顔の表情が変わることはない、それで多くの者がこう言うのだ。
友人と呼べるのは伊織杏子だがその杏子は別としてまなみと付き合う者は少ない、しかしある従兄は彼女をこう評していた。
「本当は人間の心がある娘だ」
「そうでしょうか」
「私達にはどうにも」
「そうは思えないのですが」
「それは本心を見せていないだけでだ」
それでというのだ。
「実は違うのだ」
「そうなのですか」
「実はですか」
「人情があって」
「普通の人ですか」
「いつも冷静で合理的な判断を下す」
それも迅速にだ、それでまなみを軍師というかコンピューターとして意見を尋ねる一族の者も多い。
だがそれでもだ、その従兄は言うのだった。
「しかし実はな」
「違いますか」
「その実は」
「人間味も備えている」
「そうした方なのですね」
「そのことは君達もおいおいわかる」
こう鬼堂院で働いている者達に語るのだった、そしてだった。
従兄もまなみによく仕事のことで意見を聞いた、するとまなみはすぐに無表情で的確な分析からどうすべきかを話した。
そしてその後で去ろうとするが従兄はまなみに必ず言った。
「時間はあるだろうが」
「あれば何か」
「お茶を飲んでいかないかい?」
こう呼び止めることが常あった。
「お抹茶を」
「お茶ですか」
「そう、それをね」
「今は時間がありますので」
まなみは落ち着いた声で答えた、表情は今も変わらない。
「それでは」
「うん、ではね」
「宜しくお願いします」
こうしてだった、まなみはその従兄と時間がある時に限って一緒にお茶を飲んだ。大抵はまなみが見事な手つきでお茶を淹れる。
そして淹れたお茶は実に美味い、従兄はそのお茶を飲みつつまなみとよく日常話をした。そしてこの時はというと。
従兄はまなみに彼女の友人のことを尋ねた、するとまなみはこう従兄に答えた。
「近頃同じ高校で伊織杏子さんという方と同じクラスで同じ部活にいます」
「その人にか」
「いつもよくしてもらっています」
「自分はよくしていないのかい?」
「私なぞが人に何か出来るか」
そのよきこと、そのことはというのだ。
「出来る筈がないので」
「だからか」
「はい、そうしたことは
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