第十三話 この世には知らない方が幸せな事も有る
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無いのです」
「……それで?」
国務尚書が先を促した。
「ベネディクトはこれまでカストロプ公爵家とは接触が有りませんでした。彼は前財務尚書が死んだ直後にマクシミリアンに接触しています。そしてアルテミスの首飾りの売り込みに成功している。この事は財務省の人間がカストロプの財政状況を調べて確認しています」
「……」
「つまりベネディクトはマクシミリアンが反乱に追い込まれるとマクシミリアンを説得しマクシミリアンもそれを受け入れたという事でしょう。アルテミスの首飾りは今回の反乱を契機に用意されたものでは無く、それ以前からフェザーンに有ったのではないかという推測が成り立ちます」
国務尚書が唇を噛んだ。マクシミリアンが生きていればもう少し詳しい事が分かっただろう。残念だがマクシミリアンはアルテミスの首飾りが破壊された後、配下の者に殺された。身体中を滅多刺しにされて嬲り殺しに近かったらしい。貴族達にとって反乱は危険だという教訓になるだろうが大事な情報源を失った事は事実だ。
「補足になるかどうか分かりませんが憲兵隊、情報部が取り調べたマクシミリアンの配下が気になる事を言っております」
「何か?」
国務尚書が鋭い視線で私を見た。気圧されるような視線だ。
「討伐軍を撃退出来れば首飾りを欲しがる人間は増えるだろうとベネディクトが言っているのを聞いたそうです。一人では有りません、複数人、そして複数回です」
「……反乱の誘発か、ベネディクトの素性を考えればフェザーンがそれを望んだという事だな」
「はい、ベネディクト以外にもフェザーンのために働く人間は居る筈です。彼らが貴族達に売り込みをかけた可能性は否定出来ません」
シンとした。
「それにフェザーンが反乱軍寄りの政策を取り始めたのは第七次イゼルローン要塞攻略戦頃から、ほぼ半年前からです。あの要塞攻略戦は失敗しました。それをきっかけにフェザーンは反乱軍が頼りにならない、貴族達を利用しようと考えたのではないでしょうか。アルテミスの首飾りに眼を付けたのはその頃ではないかと思います」
国務尚書が強い視線でこちらを睨んできた。
「……フェザーンが反乱軍寄りの姿勢を示すか。そんな事がレポートに書かれていたな」
「はい」
「レポートを軽視したつもりは無いがフェザーンの動きに今少し注意を払うべきであったか……」
国務尚書が唇を噛み締めている。“はい”とは言えない。軽視したのは我ら帝国軍三長官も同じなのだ。
「閣下、その書かれていたというのは……」
「気になるかな、フレーゲル内務尚書」
「はい、その、まさかとは思いますが……」
恐る恐ると言った口調だ。国務尚書が冷笑を浮かべた。
「そのまさかだ。ヴァレンシュタインは半年以上前にフェザーンの動きを予測していた。……イゼルローン要
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