414部分:第二十六話 このうえもない信頼その七
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第二十六話 このうえもない信頼その七
「しかしそれでもだ」
「世界は一つではない」
「あの、申し訳ありませんが私は」
「私もです」
「私もまだ」
誰もがだ。怪訝な顔で話すのだった。
「仰る意味がわかりません」
「今の御言葉の意味は」
「どうしても」
「わからないか」
彼にはわかる。そしてそれがわかる者は。
「私と。ワーグナー氏と」
「そして?」
「もう一人おられるのですね」
「オーストリアの皇后陛下」
ビスマルクは己も含めて三人の名を挙げた。
「その騎士のいる場所はわかっている」
「では閣下がですね」
「すぐにですね」
「その騎士にお声をかけて」
「そのうえで」
「私が。呼ぶか」
ビスマルクはその世界を見ながら。また話した。
「そうするか」
「はい、そうされてはどうでしょうか」
「私達ではです」
「その方が何処におられるか」
「それすらもわかりませんから」
だからだと。周りの者達はそのビスマルクに話す。
「その様に御願いします」
「宜しければ」
「できればいいのだが」
しかしだった。ビスマルクは。
その顔に憂いを満ちさせてだ。そして言うのだった、
「実際にな」
「いえ、その方が何処におられるのか御存知ですよね」
「そうですよね」
「知ってはいる」
それはビスマルクも認めた。その通りだとだ。
だがそれと共にだった。憂いの顔のままで。
「しかし。それができるかどうかはだ」
「わからないのですか?」
「そうなのですか」
「この世とは別の世界」
呟く様に。その世界を見つつ話す。
「そこに辿り着ければ」
「?別の世界」
「そこに辿り着くことができればですか」
「その騎士殿に御会いできますか」
「そうだというのですか」
「そして呼べるのですね」
「結局あの騎士に会えるのは」
そして呼べるのは誰かもだ。彼はわかっていた。
そのことをだ。やはり呟いて話した。
「あの方だけなのだろう」
「バイエルン王、あの方だけ」
「そうですか」
「私はベルリンにいる」
ミュンヘンでもその世界でもない。それが彼を悩ませていた。
それを見つつだ。それでだった。
「行けたらいいが。あの方の為にも」
「バイエルン王の為に」
「そうされたいのですね」
「そうしたい。是非な」
彼は遠くを見つつ話した。そこに見えるものは何処までも清らかな青、そして白だった。その何処までも澄んだ色を見つつ。王のことを考え憂いていた。
その憂いを向けられている王もだった。今もまた。
玉座に座って項垂れたままだ。彼等を待っていた。
「間も無くですね」
「はい、来られます」
「あの方々が」
部屋の左右に控えている近衛兵達が王のその言葉に応えて話
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