92話:経過
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
宇宙歴794年 帝国歴485年 12月上旬
首都星オーディン 憲兵隊 特務分室
ジークフリード・キルヒアイス
「まったく、政府はなにをしていたのだ。このような重犯罪が野放しにされていたとはな。シェーンコップ少将は『責任ある立場に責任を果たさない人間が就いた時どうなるか?という最悪の一例』とおっしゃっていたが、特に捜査機関の人間が長いものに巻かれるだけなら、それこそ帝国の有り様にひびが入るであろうに......」
「ラインハルト様、少なくとも惑星ケーニッヒグラーツではそのようなことはもう起こりません。政府内でも処分が進んでおりますし、この調査は決して無駄ではございませんでした。まずは、それで宜しいのではないでしょうか?帝国は少しづつですが良い方向へ進んでおります」
「キルヒアイスは美点や長所を見出すのが得意だからな。俺はどうしても欠点に目が行ってしまう。軍部系貴族や辺境領主の方々は領民への責任を果たしておられるのに、なぜ一方ではこんなことになるのだろうか。門閥貴族は本来、帝国の藩屏として統治を担う立場であったはずなのにな。まあ、責任を果たしている軍部系貴族に属しているのが唯一の救いだが」
ヴェストパーレ男爵ご夫妻の暗殺未遂事件に端を発した『カストロプ公爵家のお取り潰し』は様々な波紋を呼んだ。第一には『大逆罪』以外で『公爵家』がお取り潰しになる先例が出来た事だ。これによって門閥貴族には少なからず波紋が広がっていると聞く。リューデリッツ伯が対策を取っておられるようだが、アンネローゼ様を始め、軍部系貴族と親しい方々には護衛が就いたままになっている。だが、いくら『公爵家』とは言えあのような苛政が当然のように行われることを見過ごすわけには行かないだろう。
憲兵隊の特務分隊として現地に調査に赴いたが、あれが統治と呼べるものなのかは私から見ても疑問だった。そして押収した資料を精査する中で、カストロプ公爵が財務尚書として行った汚職だけでなく、美術品の強引な買い取りや利権の横領を黙認した政府関係者も次々に明らかになった。指示があったので進捗があるたびに報告していたが、政府系の実務担当であるゲルラッハ子爵は、最近ではラインハルト様の顔を見るとため息をつくようになっている。本来なら任務外ではあるが、暗殺未遂事件に政府が絡んでいるかのような状況だったため、内務省が管轄すべき所を憲兵隊の取り扱いになったために配慮しての事だ。
また容疑者が身内から出たとなれば、ため息をつきたくなる子爵のお気持ちも分からないではないが、ラインハルト様からすると、『自分たちの醜態の尻拭いをさせておいて、その態度はなんだ?』とお思いなのだろう。正論なのだが、軍人はともかく政府や門閥貴族となると、まだ相手のお立場で考える事が苦手なご様子だ。ただでさえ少ない人材がますます減
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ