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永遠の謎
413部分:第二十六話 このうえもない信頼その六

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第二十六話 このうえもない信頼その六

「あの方を心から理解できる者がいなければだ」
「それはワーグナー氏でしょうか」
「やはり」
「他ならぬ」
「もう一人いるとすれば」
 ビスマルクの目は現実を見る目である。だが彼は今あえてこの世、即ち現実とはまた別の世界を見てだ。そのうえで話すのだった。
「騎士だ」
「騎士、ですか」
「といいますと」
「あの白銀の騎士だ」
 彼もまただった。こう言ったのである。
「彼ならばだ」
「白銀の騎士、ですか」
「その人物ならですか」
「あの方をお救いできる」
「そうだというのですね」
「その通りだ」
 ビスマルクはその世界を見ながら話していく。尚彼も後にその白銀の騎士となる。その像がある港町に置かれることになるのだ。
 だが彼はこのことを知らず。そのうえで話すのだった。
「あの騎士ならばだ」
「ではその騎士殿をですね」
「あの方のところに案内しましょう」
「そうしましょう」
「今すぐに」
「そうしたい」
 ビスマルクもだ。それを願うというのだ。
「是非共な」
「ではその騎士殿は何処におられるのですか?」
「バイエルンでしょうか。それともプロイセンでしょうか」
「若しくはオーストリアでしょうか」
「どの国でもない」
 また話すビスマルクだった。
「その騎士はいないのだ」
「いませんか」
「ドイツにはですか」
「ゲルマン民族の世界には」
「いや、ゲルマンの中にいる」
 彼等にだ。ビスマルクはまた話した。
「しっかりとだ」
「いますか」
「ではすぐにですね」
「その彼を探してそのうえで」
「あの方の御前に」
「そうしたいのだが」
 願望の言葉だった。しかしそれが現実にできるかどうか。それも話すのだった。
「できるのなら」
「?どういうことですか?」
「御言葉の意味がわかりませんが」
「私もです」
 彼等のうちの誰もがだ。彼の今の言葉の意味が理解できなかった。
 そしてそのうえでだ。また言うのだった。
「ドイツにおられるのですね」
「我等ゲルマンの世界に」
「ならば御呼び出来る筈では」
「オーストリアにいてもどの世界にいても」
「それが違うというのですか」
「世界は一つではない」
 ビスマルクは言った。
「そう。一つではないからだ」
「世界は一つではない」
「?地球がもう一つあるのでしょうか」
「まさか」
「地球は一つだ」
 それはだと。また話すのだった。

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