第十二話 作戦名は『鉄槌』だ!
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反乱は簡単に鎮圧されるだろう。伯の顔に失望の色が見えたがそれさえも何の感銘ももたらさなかった。
「ですがカストロプにはアルテミスの首飾りが配備されていると聞きます」
「その事は私も知っている」
「御存知ならば」
「くどいぞ、正規艦隊は動かさぬ」
伯が悔しげに唇を噛んだ。美男だが些か表情に険があるな。軍務尚書が一つ息を吐いた。
「ローエングラム伯」
「はっ」
「卿は宇宙艦隊副司令長官の任に有る。ならばその任に相応しい責任を果たして欲しいものだな」
「……小官はその任を果たそうとしております」
伯の顔が紅潮した。侮辱されたと感じているのだろう。
「それなら良いがな。私には卿が武勲欲しさに出兵を請うているようにしか見えぬ。一艦隊司令官ならそれで良いが卿は宇宙艦隊副司令長官なのだ。卿が責任を果たすべきは帝国の安全保障を如何に守るかであろう。気を付ける事だな」
「……御忠告、肝に銘じます」
「カストロプの反乱鎮圧に正規艦隊は動かさぬ。これは決定事項だ、下がって良い」
「はっ」
伯が敬礼し下がった。来る時は意気込んで足取りも軽かったが今は重たげな風情だ。余程に失望が大きいのだろう。
伯の姿が消えると軍務尚書がまた息を吐いた。
「気楽なものだ」
ボヤキに近い、思わず失笑した。司令長官も笑っている。そんな我等を軍務尚書が恨めしげに見た。
「笑い事ではあるまい」
“済まぬ”、“申し訳ない”と二人で軍務尚書に謝った。だが如何にも可笑しい。
「あれが現実になった」
軍務尚書の言葉に三人が顔を見合わせた。
「まさか本当にアルテミスの首飾りが使われるとは……、信じられぬ事だな」
私の言葉に二人が頷いた。
「アルテミスの首飾りが使われた事も信じられぬがヴァレンシュタインがそれを予測した事も信じられぬ。あれがカストロプ公を唆したと言うなら分からぬでもないが……」
司令長官の言う通りだ。何故予測出来たのか? 如何にも違和感がある。
「ヴァレンシュタインは何と?」
軍務尚書に訊ねると不愉快そうに顔を顰めた。
「“そうですか”の一言だ。他に言葉は無いのかと聞いたが“教官を増やして頂きたいと思います”と言ったよ。カストロプの反乱には興味が無いらしい。あの男にとって反乱はもう終わった事なのだろう」
司令長官が“可愛げが無い”と言った。同感だ、予測が当たったと喜ぶなら可愛げが有るのだが……。
「軍務尚書、国務尚書には御報せしたのかな?」
「先程お伝えした。頬の辺りが引き攣っていたな」
三人が顔を見合わせた。想定はしていたが現実となって改めて衝撃を受けたらしい。
「改めて閣下からヴァレンシュタインを守れと命じられた。今回の反乱は鎮圧出来る。だがそうなればヴァレンシュタインがフェザーンの動きを見破ったという事
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