第十二話 作戦名は『鉄槌』だ!
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
力均衡を望む者です」
「フェザーン……」
中将が頷いた。
「アルテミスの首飾りは自由惑星同盟の軍事機密です。民間企業が流せるものでは有りません。もし、そのような事をすれば同盟領での商行為は出来なくなります」
その通りだ。でも自由惑星同盟なんて言って良いの? 此処は帝国なんだけど……。
「つまり、それが出来るのはフェザーン自治領主府、あるいは自治領主府の委託を受けた者という事になる」
「反乱を長引かせるためですか」
中将が頷いた。
「その通りです。アルテミスの首飾りを使って反乱を長引かせ同時に帝国の兵力を損耗させる。その間に同盟には兵力の回復を図らせる」
「……」
有り得る事だと思う。フェザーンは帝国と同盟の間で利益を得てきた。どちらか一方が強大になる事は望まない。近年帝国が有利に戦争を進めている。フェザーンがそれを憂いていてもおかしくはない。
「そうなれば他の貴族にも売れるでしょう。貴族達はカストロプ公が政府に嵌められたと分かっている筈です。カストロプ公の事は自業自得と思うでしょうが次は自分ではないかと疑心暗鬼になってもいる筈。アルテミスの首飾りを喜んで買うでしょうね」
怖い、中将は帝国政府だけじゃない、フェザーンの動きも読んでいた。エーレンベルク元帥が顔面蒼白になったのもその所為だろう。
「上手く行けば帝国は彼方此方で貴族達が反乱を起こし国内は大混乱になる。帝国の国力は衰え同盟との勢力均衡が図れる。そしてフェザーンはアルテミスの首飾りで大儲けが出来る。そういう事です」
中将にとって反乱はもう終わっているのだと分かった。騒がないのではない、騒ぐ必要が無いのだ。反乱は早期に鎮圧されるだろう。
帝国暦487年 10月 28日 オーディン 軍務省尚書室 シュタインホフ元帥
「カストロプはオーディンの直ぐ傍にあります。反乱を早期に鎮圧しなければ帝国の威信にも関わりましょう。正規艦隊を動かすべきかと判断します」
「その必要は無い。一貴族の反乱に正規艦隊を動かすなど卿は何を考えている。それこそ帝国の威信に関わろう」
ローエングラム伯がカストロプの反乱鎮圧に正規艦隊を動かすべきだと提起したが軍務尚書はにべもなく拒否した。
公平に見て軍務尚書の言う事は正しい。正規艦隊を動かせば貴族達に恐ろしいのは正規艦隊でありそれ以外は大した事は無いと誤った認識を与えかねない。それでは正規艦隊の外征中こそが反乱を起こす時だと貴族達は思いかねないのだ。正規艦隊以外の艦隊を使って反乱を早期に鎮圧する。それこそが貴族達への威圧になる。
伯が司令長官に視線を向けた。口添えを期待したのだろうが司令長官は沈黙を保った。多分、白けているのだろうな。私も白けている。何を騒ぐのかという気持ちが有る。既に準備は出来ている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ