アインクラッド 後編
嗤う三日月、紅の幽光
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ラフであることも考慮したが、男の言葉はその可能性を直感的に否定したくなるような説得力と狂気を内包しているように聞こえた。
「このSAOというゲームには、PKというシステムがある。だが、プレイヤー間での殺し合いを嫌い、ゲームクリアだけを目的にさせるならこんなシステムは必要ない。むしろ邪魔、反目するものだ。でもここにはそれがある。つまりこの世界は、人が他人を殺すことを許容してるのさ。それがゲームデザイナーの――神の意思と言ってもいい。つまりPKってのは、このアインクラッドに生きる全てのプレイヤーに与えられた権利だ。俺たちはゲームの中で、プレイヤーに与えられた機能と権利を行使しているに過ぎない。Right?」
男が振り向き、オレンジたちに問いかけると、そこかしこから口笛や歓声が上がった。その光景に、マサキの脳裏で眼前の男と、今や攻略組最強とまで言われるようになった一人の男が重なった。二人のベクトルは完全に逆方向を向いているが、強烈なカリスマによって人を惹きつけ、導くところは同じなのかもしれない。
「……トウマ。気を抜くなよ。こいつらはただのオレンジじゃない」
「ああ。今分かったよ」
マサキたちの声も、緊張で低く、硬くなった。男は再びこちらを向くと、さながらスポットライトを一身に浴びた舞台俳優のように芝居がかった動きで、ポンチョに隠れた両腕を大きく広げてみせた。
「さあ、俺たち《ラフィン・コフィン》の初舞台だ。派手に行こうじゃないか」
ポンチョのフードから僅かに覗く口元が三日月のように歪められた。その端に雨粒が落ち、輪郭を伝っていくが、マサキにはその透明な雫が、男の牙から垂れた真っ赤な鮮血のようにさえ思えた。
男は続けて言った。短く。しかしはっきりと。
「イッツ・ショウ・タイム」
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