暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
嗤う三日月、紅の幽光
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
中したところで大したダメージも与えられないが、敵が状況を把握できていない今ならば、面白いようにこちらの意図したとおりに動かすことができる。

「な、何だ、煙が!?」

 人はパニックになると、まず足が動かなくなる。その状態で差し迫った危機に対応しようとした結果、男は短剣を盾で弾き、噴き上がった煙に囚われた。それを見てマサキは迷うことなく白煙の中に飛び込む。それによりマサキもまた視界を失うが、マサキは短剣を投擲する際に男を見た一瞬の間に、男までの距離とそこに到達するまでに必要な歩数を計算していた。その計算どおりに現れたシルエットに《体術》スキルで拳を打ち込み、怯ませつつ腕の位置を確認したところで、一人目と同様に武器を持つ手を斬り飛ばし無力化する。

「マサキ!」
「分かってる!」

 人数差があるとは言え、敵はトウマをここまで追い込んだ。そのことから、少なくとも敵は烏合の衆ではないだろうと踏んでいたマサキは、奇襲の続行を諦めてトウマの声がした方角に駆けた。煙から抜けると、マサキが考えたとおり、敵はこの煙とトウマから距離を取って集まっていた。丘の斜面でトウマと合流を果たしたマサキは、小さく息を整えて敵の集団を見下ろす。

「悪い、助かった」
「全くだ。お前といるといつもこうだな」
「それはちょっと言い過ぎじゃねぇ? 今回は、アルゴから情報を買ったんだって」
「何の」
「そりゃ……ここに、俺の探してたブツがあるっていう」
「こんな辺鄙な場所にか? ……まあいい。そういうことなら、後であの鼠をたっぷり非難してやろう。周辺の脅威調査に漏れがあるのは情報屋の失態だからな」
「危険な輩が出没してるから注意喚起しとけって情報提供に行くんですね分かります」

 こんな状況だと言うのに、二人の間には軽口が飛び交う。その最後にマサキが渋い顔をしたところで、オレンジカーソルの集団が割れ、黒のポンチョを着たシルエットが出てきた。

「Wow……今日はつくづくツイてるぜ。しがない服屋に糸を垂らしてただけで、今をときめくSuper Starコンビが釣れるとはな」
「金目当てならさっさと失せろ。さもないと、途轍もなく高い授業料を支払う羽目になるぞ」

 ポンチョの男――声で性別が分かった――は、マサキの脅しに対してチッチッチ、と指を振った。この雨音の中でも、彼の声は不思議とすんなり耳に届いた。

「俺たちはそんなチャチなモンが欲しいわけじゃあない。俺たちが欲してるのはな、純粋な命の取り合いだよ」
「……何?」

 マサキの背筋を雨よりも冷たい雫が伝い落ちた。これまで、オレンジプレイヤーの目的は他人の持つ金目の装備やアイテムを奪うことであり、決して命を奪うことではなかった。しかし、男はそれこそが目的だと言う。それがこちらを脅すためのブ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ