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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
嗤う三日月、紅の幽光
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ゲームクリアを阻む門番であると同時に、討伐した際膨大な量の経験値にコル、レアアイテムをばら撒く非常に「美味しい」エネミーでもある。通常レイドパーティーを組んで攻略するフロアボス戦をたった二人で倒したということは、そこから得られる利益も二人が独占したということであり、「リソースの独占は攻略組内での著しい戦力不均衡をもたらし、ゲームの攻略を阻害する」という表向きの理由で問題提起されたのだ。実際それには一理あるのだが、この件が議題に上がった時に大手ギルド幹部連中から向けられた憎しみの視線を思うに、抜け駆けをしたマサキたちに対する恨みつらみも多分に入り混じっていたことだろう。
「二人がフロアボス討伐で得た全アイテムとコルの没収」などという過激な案も一部から噴出したが、最近《血盟騎士団》副団長として急激に攻略組内での発言力を増しつつあるアスナの生真面目さに助けられ、「二人の取り分を除いた取得アイテムのオークション出品と、他の攻略組が二人のレベルに追いつくまでの謹慎」という処分で決着した。謹慎といっても四六時中監視されているわけではなく、あくまでフロア攻略参加に対する謹慎であるから、宿に引きこもっている必要もなければフィールドに出てレベリングしたところで捕まるわけではない。しかし、主要なレベリングスポットには大手攻略ギルド所属のプレイヤーが来ているだろうし、そんなことをして見つかれば攻略組からより重い処罰を受けることになる(と、会議の後に目をつり上げたアスナから散々っぱら言い含められた)ため、休暇も兼ねて大人しくしているというのが現状だ。

「まあ、そのうち終わるだろう。噂じゃ、二十五層の攻略に手こずってるらしい。案外ボス戦前に呼び戻されるかもな」
「ボス戦……ボス戦ねぇ……」

 ぶつくさと文句を垂れるトウマをよそに、マサキはストレージから金属製のコーヒーポットを取り出すと、一緒にオブジェクト化させたコーヒーカップに中の液体――無論コーヒーである――を注いだ。
 最近入手したこのポット、一見何の変哲もないドリップポットなのだが、その実無限にコーヒーが湧くという魔法のポットなのだ。しかもホットとアイスの両方を選べ、好みで砂糖やクリームの量、酸味や苦味といった味のバランスの調節が可能で、果てはブレンドコーヒー以外にもエスプレッソとカプチーノが淹れられるという、まさにコーヒー好き垂涎の品である。ただ一つケチを付けるならば、これでコーヒーを飲む度にこのポットを入手するまでの経緯を思い出してしまうことだろうか。出来ることならば、コーヒー豆の渋皮と一緒に捨ててしまいたいところだ。

「うへぇ……」

 マサキがコーヒーに口を付けると、トウマのげんなりした声が聞こえた。目線を上げると、テーブルの向こうで上を向いていた頭が回転して外を向き、もう一度「うへぇ」と呻
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