純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 11
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
岐に亘る数々の問題解決を淡々と熟す化け物。
(貴女に逆らうほうがどうかしている)
「で。クロちゃん、お返事は?」
「……了解です」
「良い子ね。さ、ミートリッテは急いで荷物を私の部屋へ運び入れて」
「はい」
「もうお気付きでしょうけど、寝室や浴室や廊下に面した扉とは違い、司教と補佐の執務室は速やかな情報共有を目的として互いの物音が聞こえやすい造りになっています。彼らが滞在している間は、く・れ・ぐ・れ・もお静かに。よろしいですわね? 皆さん」
「「「「心得ております」」」」
一斉に立ち上がった私達は深々と腰を折り、柱に偽装した扉から出て行くプリシラの影を見送った。
彼女の姿が見えなくなった途端ちょっとだけ呼吸が楽になったのは、多分、気の所為ではない。
恐るべし。視界に収まっているだけで、相手の心に逃げ出したい衝動を生じさせる圧力の持ち主・プリシラ。
何も知らされないまま呼び出された「生贄」の今後に、幸多からんことを切々と祈ろう。
私にはもう、それくらいしかできない。
vol.16 【聖者の裁定】
「(なぁ。アンタ、どっちだと思う?)」
私の左隣に座り直した殿下が、手に持った百合根を見つめながら、潜めに潜めた声を私に向けた。
「(どっち、とは)」
同じく座り直した私も、処理途中でローテーブルに置いた百合根を再度持ち上げ、作業を続行しながら聞こえるか聞こえないかくらいの声量で尋ね返す。
「(聖者の天秤)」
「(……え!? 「彼ら」はプリシラと親交が無いのですか!?)」
『聖者の天秤』
プリシラが相手を「生贄」か「庇護対象」か見定める儀式の名称だ。いつからか自然とそう呼ばれていたので、誰が名付けたのかは不明。幼少期から一緒に生活している人間は別として、大抵の場合は三度目の再会までに。早ければ初対面で。裁決が下される。
即ち。
「(まともに会ったことがない相手を利用したんですか、あの女性は……)」
「(いや。プリシラがアレを呼んだのは、能力・性格共に信用に値する「庇護対象」だからだ。まだ天秤に掛けられてないのは、アレに付いて来る主戦力の代表のほう。まともにどころか、今日が初顔合わせだぞ)」
「(!! それは!)」
なんてことだ。
希少な「庇護対象」が思わぬ所に居た。
国内の「生贄」達にもまだ希望は残されているというのか。
しかし、彼の傍に居る人間が未だ裁定を授かっていないとあれば油断はできない。
「庇護対象」が「生贄」で囲まれている場合、プリシラは躊躇い無く「庇護対象」を保護するだろう。
助けを求める「生贄」の声は遮断され、最悪「庇護対象(かれ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ