暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 11
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任務中である事実に変わりは無いもの。正規の雇い主から給料として支払われるのが筋ではなくて?」
 「労働と対価、雇用契約とは何なのか。考えさせられますね」
 「他人の心配なんて余裕ねぇ、クロちゃん。そんな優しい貴方に置き土産よ」
 「要りません」
 「貴方に拒否権が残されていると思う?」
 「……いいえ」
 「よろしい。じゃ、分配後の片付けが終わったら、ロザリア様を通してレゾにゃんと接触しなさい。アーレストとマリア様に「貴方が」百合根の料理を作って差し上げるのよ」
 仕事が増えた。私に自主性は不要らしい。
 「百合根の料理を、アーレスト達に?」
 「そう。レゾにゃんの体を一時的に貸してもらって、彼方(あちら)の材料で二人分の夕飯を作って頂戴。レゾにゃんには、予定通り此方で作る物を食べさせれば良いから」
 「……体を貸してもらう、の意味は解りませんが……それはアーレスト達の要請ですか? 忙しすぎて夕飯を作る時間が無いとか?」
 「いいえ。少人数で頑張っている知り合いへの奉仕活動よ。本来なら彼方(あちら)で活動している筈のソレスタ神父とフィレスさんが此処に居るんですもの。王都ほどではないにしろ、そこそこの人数が集まる街民相手に顔を出せる人間が一人か二人じゃ、手が足りないのは火を見るよりも明らかじゃない。だから、せめて夕飯くらいは作ってあげましょうねって話。ああ、なんて優しく思慮深いのかしら!」
 「いやあー、私達は今直ぐ戻っても構わないんだが? どうせレゾネクトに頼めばいつでも戻って来れるんだし、そのほうが向こうの助けにな」
 「お口を閉じて。目線を百合根に戻し。手を動かしてくださいませ。ソレスタ神父。」
 「はい。すみません。」
 飼い主の一睨みで猟犬が震え上がった。
 「とにかく、二人の分もちゃんと作……っと。来たわね」
 プリシラの言葉を遮るように、次期大司教の執務室から小さな鐘の音が聴こえてきた。
 リンゴーン、リンゴーンと響く少し低めな金属音は、プリシラやミートリッテさんに外部からの来客を報せる合図。鳴らしているのは、鐘に括り付けてある長い長い紐の先を握る人物。一階の受付に座っている女司祭だ。
 以前は、扉を叩いても直ぐには出て来ないプリシラを怠慢、そうでなければ悪巧みの最中かと疑っていたのだが、どうやら違っていたらしい。こうした事前の合図が無ければ対応できないほど忙しかったのだ。
 此処に滞在して数時間。私達が見ている間、彼女は殆ど休み無く誰かや何かと連絡を取り合っていた。それはもう、鳥、人、鳥、鳥、人、鳥、人、といった具合で、引っ切り無しに執務室やバルコニーを出入りしている。
 信仰の根幹に関わる女神の重要な話を聴いている間でさえ、受け取り・送り出し役のミートリッテさんを介して複雑な文書の遣り取り、延いては多
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