395部分:第二十五話 花咲く命その十一
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第二十五話 花咲く命その十一
「マイスタージンガーの」
「今度上演されるそれですね」
「はい、それはどうでしょうか」
こうゾフィーに話すのである。
「読んでいれば落ち着きます」
「そうですね。それでは」
「はい、それでは」
こうした話をしてだ。今はそのマイスター陣がーの脚本を読みだ。ゾフィーはその心を落ち着かせたのだった。とりあえず今は。
王の心は憂いを増していた。その中でだ。
まただ。その話を聞いたのだった。
「ビューロー夫人にですか」
「はい、妊娠されていますが」
「その父親はです」
「その」
「ワーグナーだというのですね」
最早だ。そのことはわかっていた。王にもだ。
「その話ですね」
「はい、そうです」
「またそうした話が出ています」
「それは」
「全ては根拠のないことです」
そういうことにしたかった。だからこその言葉だった。
「中傷に過ぎません」
「ですがそれでもです」
「ミュンヘンのあちこちで噂になっています」
「新聞にも書かれていますし」
「これは」
「新聞は好きなことを書くものです」
どの時代でもどの国でも言えることだ。そこに責任はない。
「気にしてはいけません」
「では一体どうされますか」
「今回は」
「一体」
「一度。当事者達を呼びましょう」
王は助け舟を出すことにしたのだった。
「そうします」
「ではワーグナー氏とですね」
「ビューロー夫人」
「そしてビューロー氏も」
「三人はそれぞれ潔白です」
このことはだ。王の中で既に決まっていることだった。
「後はそれを証明するだけです」
「だからこそですか」
「三人をですか」
「陛下の御前に」
「そうして下さい」
王は周囲に命じた。
「その様に」
「はい、それではすぐに」
「そうします」
「そして後は」
後はだと。ここで話が変わった。
「あの、陛下」
「何でしょうか」
「大公ですが」
ゾフィーの父だ。王の親族でもある。その彼がというのだ。
「かなりご立腹です」
「婚姻のことですね」
「そうです。延期されたので」
そのことでだ。彼は怒っているというのだ。
「もうかなりです」
「そうでしょうね」
それを聞いてだ。王は納得する声で応えた。
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