392部分:第二十五話 花咲く命その八
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第二十五話 花咲く命その八
「やはりそれは」
「バイエルンです」
ワーグナーはこの国だと。王に答えた。
「この国にです」
「バイエルンにですね」
「はい、そうです」
まさにだその国だというのだ。
「ですから。それはです」
「安心していいのですね。では?」
「どの町にされますか」
王の最大の関心ごともだ。話される。
「一体どの町に」
「それもまたです」
「またですか」
「その。最も相応しい場所に」
その場所にだ。歌劇場を築くというのだ。
それを話してだ。ワーグナーはだ。
王を安心させた。しかしだ。
ミュンヘンだとは言わなかった。それは決してだった。
王はそのことを問おうとする。しかしだった。
それはどうしてもだ。問えなかった。それでだ。
こう言うしかできなかった。その言葉は。
「私は望みます」
「何をでしょうか」
「貴方の芸術がその相応しい場所に設けられることを」
こう言うだけだった。
「それを望みます」
「そうですか」
「はい、期待しています」
ミュンヘンとは言えなかった。まるで恋人に言う様に。
そしてだった。王は吉報を待つのだった。ローエングリンでの衝突のことはその吉報を前にしてはどうということはなかった。しかし心には残っていた。
その王にだ。届いた報告は。
「バイロイト!?」
「はい、バイロイトです」
「あの町とのことです」
周りの者達が王に、怪訝な声をあげた王に報告する。
「あの町に歌劇場を築かれたいとのことです」
「ワーグナー氏はそう仰っています」
「馬鹿な」
それを聞いてだ。王はすぐにだった。
驚き否定する顔でだ。彼等に言うのだった。
「そんなことは有り得ません」
「けれどです」
「ワーグナー氏はそう仰っています」
「バイロイトだと」
「あの町に御自身の歌劇場を築かれたいと」
「バイロイト。あの町は」
その町はどうかというのだ。王もその町のことは知っているのだ。
だが知っていてもだ。王はこう言うのだった。
「あの町は我が国の北にあり」
「何もない町ですね」
「これといって」
「はい、そうです」
まさにそうだというのだ。
「人も多くありませんし。これといってです」
「産業もありませんね」
「そういったものも」
「それで何故。いや」
自分で言っていてだ。王は気付いたのだった。
その気付いたことは。産業ではなくこのことだった。
「ドイツ全体から見て中央にあります」
「そうですね。従って交通の要衝ではあります」
「人の行き来は多いです」
「ドイツ全体を見て」
王は気付いたのだった。
「そのうえで、ですね」
「ドイツ全体を見てですか」
「そのうえであの町にしたのですか」
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