「そう驚いていただけると、わたしも非常に嬉しいです」
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『まあ一条くんなら大丈夫大丈夫。僕が保証するよ』
――などと、夢物語を想いながら。そもそも総務省の役人である菊岡さんが、どうして自衛隊の採用試験の話を持ってくるのかという疑問はあったが、「自衛隊の友人に将来有望な若者を頼まれた」などと言われれば何も言えず。
『いやあ重ね重ねよかったよかった……ああ、それと。もう一つだけ』
「はい?」
『……《ALO》の方で、凄い拾いものをしたそうだね?』
「プレミアのことですか?」
声色が、変わる。電話先のことではあるが、明らかに菊岡さんの雰囲気が変わったことを感じた。拾いものというと語弊があるが、十中八九プレミアのことだろうと。
『そう、プレミアと名付けたんだったね。噂の彼女はどんな調子かな?』
「…………」
その『噂』とやらの出所を聞いたところで答えはしないだろう。ただの電話だというのに、何か重大な未来の決断でも託されたかのようなプレッシャーを感じつつ、ショウキは菊岡さんに返答する。
「……いい子ですよ」
『いい子?』
「はい。優しいやつ、でもいいです。ちょっと食い意地は張ってますが」
とはいえ返答は、嘘偽りのないものを言う他にない。最初はまるで人形のようだったが、本当に優しい人間に育ったものだと……少し食い意地は張っているが。
『ああ……一条くんと篠崎さんの子供みたいなものだからね、それは優しく育つだろう』
「じゃあ今も勉強中なので」
『おおっと。じゃあ自衛隊の友達には僕から言っておくよ。ぜひとも、頑張ってほしい』
そんな評価に虚を突かれたのかは知らないが、菊岡さんの声色が普段の飄々としたものに戻っていた。ならばもう話すことはないと会話を打ち切ると、幸いなことに向こうから通話を切ってくれたようで、今までの勉強なみに気疲れしたと身体を大きく伸ばす。
「……はぁ」
やはり目線はそのまま《アミュスフィア》の方に向かっており、つい今しがた話題になったこともあって、どうもプレミアの様子が気になって。今日のノルマは達成しただの、過保護ではなく話題になったからだの、さまざまな誰に向けてか分からぬ言い訳をショウキは脳内でしつつ、《アミュスフィア》をしっかりと装着する。
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