ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
3章 穏やかな日々
26話 揺らぎ
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
怒っている。
「前にツカサ君、私に言ったよね?ちゃんと言葉にしなきゃ伝わらないことがあるって。これから話し合わなきゃいけないこと、たくさんあるなって。そういったんなら、ツカサ君もちゃんと思ってること言ってよ。伝えてくれなきゃ伝わらないよ」
リアはまっすぐツカサを見ていたようだったが、ツカサはリアの瞳を見れないでいた。アスナにあの日言ったことは、本心だった。それは隠しようもない。だが…このことを、リアに話すつもりはなかった。なぜなら…あまり、よくない話だから。
だが、ここで言わないとリアは納得しないだろう。
ツカサは、マグカップを割れるほど握りしめた。
「リアも俺も…あまりに、不確かな存在だ。リアはともかく、俺は…分かってるだろ?」
ツカサは、そういって、右手で左胸をたたいて見せる。リアは顔を曇らせて、わずかに頷いた。
「だから…もし、俺がリアの重荷にあるようなことがあったら…俺は、一人になることを選ぶと思う」
「っ…!」
リアはうつむいたまま、マグカップを握りしめているツカサの服の袖をつかんだ。その力は、どんどん強くなっていく。
「それ…本気で言ってるの?」
「っ…ああ…」
「私は…どんなツカサ君でも、重荷だなんて思わないよ…っ。なのになんで…っ!?」
潤んだ灰茶色の瞳。それが、あまりにも痛すぎて、ツカサは眼をそらすしかなかった。
「リアも…あの時、死のうとしたじゃないか」
「だって、あれは、私はツカサ君を…殺そうとした…っ!」
「俺にとっても、それぐらい、リアに迷惑をかけることは、ウェイトが重いんだ…!リアに迷惑をかけるぐらいなら、死んだほうがましなんだ…っ!」
血を吐くような思いだった。リアが唇をかみしめて、痛みにこらえるようにうつむく姿を見ると、ツカサの心臓は、張り裂けそうなほど、ずきずきと痛んだ。リアにこんな顔をさせるだなんて最低だ。それこそ、死んだほうがましだった。
だが、同時に、どんなことがあっても、リアと一緒にいたいと叫ぶ心もいた。だが、ツカサは無理やりその感情を力ずくで抑え込んだ。
そんなことを欠陥品の自分が思ってはいけない。
「ごめん…」
一言、そういうのが精一杯だった。
ツカサの袖をつかんでいたリアの手は、ゆっくりと力が抜けていき、やがて、完全に放した。
「…そっか…」
リアは相変わらずうつむいたまま小さく言うと、大きな音を立てて立ち上がった。
「ちょっと、外出てくるね」
足早に、リアの姿は玄関の奥に消えていく。しばらく家の中は、まったくの無音に包まれていた。
やがて、ひとつついた自分のため息が妙に大きく聞こえる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ