ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
3章 穏やかな日々
26話 揺らぎ
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に含むと、驚く程香ばしい豆の香りがいっぱいに広がる。NPCレストランでは絶対に出せない味だ。リアも同じようにコーヒーをすする。と、リアの足元に、ツカサに膝から下ろされ、さみしそうな顔をしているルーがすり寄ってきた。リアは、そんなルーの頭を撫でながら、
「今日も留守番、ありがとね、ルー」
すると、ルーは少々きりりとした顔つきになり、まるで「今日も一日問題なしでした、ご主人様!」といっているようにしか見えない。これ、狼だよな…とツカサは思わず思ってしまう。犬にしか見えない。いや、犬の祖先はオオカミだが…くだらないことを延々と考えてしまいそうで、ツカサは考えることをそこでやめた。
「今日は誰に会ってたんだ?」
「ああ、アスナだよ」
飲みかけたコーヒーを吹き出しかけそうになり、ツカサは慌てて飲み下す。
「アスナ!?」
「うん、そうだよ。ツカサ君はキリトでしょ?」
リアがあっていた人物がアスナだということと、キリトに会っていたことを見抜かれた驚きで、固まった。
「…リアはなんでもお見通しだな」
「だって、ツカサ君をメッセージ一本で呼び出せるフレンド登録してる人って、キリトしかいないし」
妙に胸にぐさりと来る。別に人見知りになりたくてなっているのではないわけで…リアもリアで、そこまで人間が得意と言わけではないのだが…だが、特に何も言わない。
「それで、キリトからは何の話だったの?」
「それは…アスナからきいたんじゃないのか?」
「やっぱり同じ話だったんだね」
ツカサは、無性にアスナがリアに何を話したのかが気になった。だが、そんなことを聞いていい物か。迷っている時だった。
「ねぇ…ツカサ君は…私を必要としなくなる日が、来るの?」
不意打ちでヘッドショットを受けた気分だった。一瞬、唐突すぎて何も考えられず、ただ茫然としてリアの顔を見つめる。だが、やがて思考が回復してくると、一つの情景が頭をかすめた。
『今の俺がここにいられるのはリアのおかげで、何よりも、誰よりも俺にとって一番大切なのは、リアなんだ。自分の命とも、比べられないぐらいに…だから、いつになるかはわからないけど、リアが俺を必要としなくなるその時まで、ずっと…ずっと、隣にいようと思ってる。』
あの時、アスナに言った言葉。まさか…
「アスナから、聞いたのか?」
「…うん…」
両手に包まれたマグカップの中の黒い液体をうつむきがちで見ているリアの顔には、不安と緊張、苦しみ、そして…恐怖。
「さぁ…な、未来のことなんて、誰にもわからないよ」
「はぐらかさないでよ」
リアの、その短いたった一言で悟った。リアは確かに、いろいろな感情を抱えている。だがそれ以上に…
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